2023年7月31日月曜日

容疑者Xの献身 (2008)

2007年に大人気となったフジテレビのドラマ「ガリレオ」の映画化第1弾。原作は、東野圭吾のシリーズで、特にこのタイトルはミステリー大賞だけでなく直木賞も受賞しています。映画も日本アカデミー賞で優秀作品賞などを獲得しました。


テレビ・シリーズのキャストがそのまま出演し、堅物の天才物理学者の湯川学は福山雅治、湯川にアドバイスを受ける貝塚北署の内海薫刑事に柴崎コウ、内海の上司で湯川と大学時代の友人である草薙俊平に北村一輝が演じます。

弁当屋を営む花岡靖子(松雪泰子)は、娘の美里(金澤美穂)と二人暮らし。ある日、金を無心して付きまとう元夫の富樫(長塚圭史)がやって来る。暴力に耐えかねた靖子と美里は二人で富樫を殺してしまいますが、アパートの隣人の石神が怒鳴り声と物音に気がつき様子を見に行くのでした。石神は物静かで見た目にはうだつが上がらない高校の数学教師で、毎朝靖子の弁当を買うのが日課です。

翌日、富樫の遺体が河川敷で発見され、草薙と内海は交友関係から靖子のアパートを訪ねます。アリバイを聞かれた靖子は、石神の指示通りに映画館にいたと話ますが、草薙はどこかに違和感を感じるのでした。草薙と内海は湯川のもとを訪ねますが、湯川はアリバイ崩しには物理学とは無関係とまったく興味を示さない。ところが、隣人の石神の名前を出した途端、湯川は「大学の同期で、天才と言えるのは彼だけだ」と言うのです。

湯川は石神のアパートを訪れ旧交を温め、石神が変わらず天才であることを確認します。湯川は「答えが必ずある数学の問題は、作る側と解く側ではどちらの方が難しいのか」と問いかけるのでした。

石神が用意したいろいろな証拠に警察は違う方向へ導かれていく中、湯川は石神が事件の隠蔽に協力していることを確信し、二人は吹雪の白馬に登るのでした。石神は「この問題は解いても誰も幸せにならないんだよ」と語る。山から戻ると、石神は自分が事件のすべての犯人であり、花岡親子はまったく無関係だと自首して来たのです。

連続ドラマの翌年に、プロローグ的なスペシャル・ドラマ「ガリレオΦ」が放送され、若き日の湯川(三浦春馬)と石神の出会いなども描かれました。もちろん、映画は単独でもちろん楽しめるようにできています。映画では、ドラマの時とはだいぶ雰囲気が異なり、湯川のお馴染みの決め台詞はなくて、推理ドラマというよりは全体に重苦しい人間ドラマになっています。

事件の推移はアリバイ崩しが中心ですから、湯川の得意な物理学的な考証は本来必要がありません。ですから、湯川がいつもなら興味が無い人間関係の中で苦悩する姿が、一番本作のメイン・テーマになっているのです。

堤真一の石神がかっこよすぎるという批評も見受けられますが、実際カッコイイ湯川に対するには、それなりの俳優が必要。堤真一はさすがに名優ですから、ずっと猫背のいかにもうらぶれた感がぴったりです。最後の最後に、すべての謎があきらかになりますが、十分に動機に説得力が生じるのも堤の演技の賜物です。