このタイトル、何と読む? アルファベットはいいとして、正解は「かみさり なあなあ にちじょう」です。三浦しおん作の小説が原作。「なあなあ」は村の人々の口癖で、「のんびりいこう」とか「いい天気ですね」といった意味らしい。
監督・脚本は矢口史靖。この監督さんは、基本はコメディ路線ですが、実に細かいところまで微に入り細に入りこだわりを持って映画作りをするので、思わず見入ってしまいます。「ハッピーフライト(2008)」でも、普段気に留めない空港の裏方の仕事に注目して、多いに楽しませてくれました。今回、目を付けたのは林業。三重の山林でオール・ロケで作り上げました。
典型的な都会っ子の平野勇気(染谷将太)は、高校を卒業したものの大学は不合格。たまたま目に留まった林業の研修生募集のチラシ・・・に写っている女性が可愛いという理由で応募します。
やって来たのは、携帯の圏外、さらにその奥の山間の小さな神去村。中村林業のエース、飯田予喜(伊藤英明)の家に居候して、予喜の妻、みき(優香)の世話になりながらいろいろ学び始めます。
中村林業は社長の中村清(光石研)、妻の祐子(西田尚美)がいろいろと目をかけてくれるものの、何事もきつい作業ばかりで、勇気は何度も逃げ出しそうになります。しかし、祐子の妹で学校の先生をしている石井直紀(長澤まさみ)がチラシの美人と知って、気になってしょうがない。
少しずつ仕事を覚え、村の人々にも杣人(そまびと、林業を営む人のこと)として認められた勇気は、48年に一度行われる神事に参加することを許されます。そして、1年間の研修期間が終了し、勇気は都会に帰ることになるのですが・・・
本当に都会のチャラチャラした若者風の勇気が、いろいろなことにめげながらも、あきらめずに成長していくのが、実に楽しい。それをさせたのが、直紀への恋心というのも悪くない。
野生児キャラの予喜、あっけらかんとしたみきも、ぎりぎり実際にいても不思議が無い描き方で、噓臭さを感じさせません。村にとってはヨソモノである勇気に対する、長老たちの反応も当然と言えば当然で無理が無い。
矢口監督は、勇気の成長過程で、携わらなければ知ることが無い林業のいろいろな仕事をつぶさに盛り込んで見せてくれます。本当に大変な仕事でしょうし、危険も伴うわけですから、杣人たちが何かと信仰を持つことも、映像の自然の流れで理解させてくれます。
映画の最大の武器は映像であり、無駄に言葉に頼らずに、林業とは何たるかの一端を的確に伝えることに成功しています。