2023年9月18日月曜日

超高速!参勤交代 (2014)

江戸時代は全国の各藩の大名は江戸と地元を2年ごとに交互に住む制度があり、参勤交代と呼ばれていました。江戸に上ることが「参勤」であり、地元に戻ることが「交代」です。参勤交代の行列を「大名行列」と呼び、その人数は禄高の多い藩では数千人にもおよびびました。

幕府に対する軍役奉仕という意味があり、地元に帰る場合には正室と世継ぎは人質として江戸に残っていないといけませんでした。また、参勤交代にかかる費用は莫大で、各大名が過度な財政的強者になることを防ぐ効果がありました。

テレビ・ドラマ「絶対零度」などの脚本家として知られるようになった土橋章宏が、もともと脚本として完成させ、2011年に映画界の芥川賞と呼ばれる城戸賞を受賞。自ら小説化した後に、映画化が決定しました。日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞しています。監督は「釣りバカ日誌」などの本木克英。

弱小1万5千石の湯長谷藩(福島県いわき市)の藩主、内藤政醇(佐々木蔵之介)は部下の武士だけでなく、町や農家の人々にも気楽に接し、城下全体も貧しくても和気あいあいとした雰囲気で包まれていました。最近発見された金山と思ったものも、実は間違いでぬか喜びでした。

江戸での勤めを終えやっと帰国した政醇のもとに、江戸家老が駆けつけてきて、幕府老中、松平信祝(陣内孝則)から、領内で発見された金山についての報告に詮議の必要があるため5日以内に再び参勤せよとの命令があったことを伝えます。これは信祝が無理を承知で、間に合わないことを理由に藩を取り潰し金山を手中にしようとしてのことでした。

知恵物の老中の相馬(西村雅彦)、剣術の使い手の荒木(寺脇康文)、理論派の秋山(上地雄輔)、弓の名手の鈴木(知念侑李)、膳番で槍の名手の今村(六角精児)、そして二刀流で政醇の飼い猿の世話をする増田(柄本時生)らと出発した政醇は、街道を走り、番所を通るときは人を雇い行列らしくして誤魔化しました。

途中で一匹狼の雲隠段蔵(伊原剛志)が、近道になる山道を案内できると仲間に加わります。段蔵は信祝の息がかかった公儀隠密が密かにつけていることに気づいていましたが、礼金を受け取ると途中で別れます。山道で足を痛めた政醇は、馬を調達して牛久宿に先行します。

その直後、隠密に襲われた一行は谷川に落ちて流されてしまい、牛久宿を通り越してしまいました。政醇は待ち合わせの女郎宿で、折檻され縛られていたお咲(深田恭子)を見初め助けます。しかし宿に手配書が回ってきたため、お咲を連れて飛び出しました。段蔵は礼金にもらった銭が細かい古銭ばかりで、彼らが本当に困っているのを知ると、ちょうど隠密と戦っていた政醇とお咲を助けるのでした。

予定より遅れて取手宿についた一行は、番所を通りぬけるために雇った人々がすで帰ってしまい途方に暮れてしまいますが、ちょうど本家の大名行列が通りかかり、飢饉のとき助けてくれたお礼として行列を一時貸してくれて事なきを得ます。いよいよ最終日、江戸で合流できた一行に、登城させじと信祝の手の者が大挙して襲いかかるのでした。

確かに、面白い。参勤交代がエンターテイメントになるのか疑問でしたが、やはり脚本がよくできているんでしょう。荒唐無稽な筋立てですが、無理を感じない。政醇以下、配下の者たちを徹底的にお人よしの「いい人」として描いているので、見ている側も感情移入しやすく、自然と彼らを応援してしまいます。

湯長谷藩は幕末まで実在した藩であり、内藤政醇も4代目藩主として実在した人物。さすがに、この話は史実ではありませんが、「忠孝・倹約・扶助」を徹底した名君と考えられていて、あながちこんなこともあったのかもしれません。