2023年9月19日火曜日

超高速!参勤交代リターンズ (2016)

第1作(2014年)が好評で、すぐに続編の製作が発表されました。江戸時代の大名の参勤交代エンターテイメントですが、前作がその江戸に向かう「参勤」の話で、今作はその帰り道の「交代」でのストーリー。

もともと、脚本の土橋章宏の原作は行き帰りがセット。監督も本木克英が続投し、出演者も同じ俳優さんが続けて出演しているので、できれば続けて見たほうがより楽しめるように思います。

弱小1万5千石の湯長谷藩の藩主、内藤政醇(佐々木蔵之介)は、幕府老中、松平信祝(陣内孝則)の5日で参勤せよという無理難題を何とかクリアし、お咲(深田恭子)を側室とすることにします。

理論派の秋山(上地雄輔)は重傷を負ったため江戸屋敷に残し、政醇は知恵物の老中の相馬(西村雅彦)、剣術の使い手の荒木(寺脇康文)、弓の名手の鈴木(知念侑李)、膳番で槍の名手の今村(六角精児)、二刀流で政醇の飼い猿の世話をする増田(柄本時生)らと共に、途中小銭を稼ぎながらのんびりと帰国の旅をしていました。

その頃、湯長谷では突然の一揆が発生し、農民たちは畑を荒らされ収穫した米も盗まれてしまいます。一揆が起こると、藩の責任は重大でお取り潰しの危険がある。幕府からは目付役人がすでに出発しているという急な知らせに、牛久宿でお咲との祝言をしていた政醇は、急いで帰ることにしました。

やっと到着するも、すでに城は尾張の柳生一族により制圧されていました。信祝は一度蟄居を命じられていましたが、将軍吉宗が65年ぶりに日光社参を行うことに伴い恩赦され復職していたのです。信祝は、ライバルである老中を柳生の手の者を使い暗殺し、政醇に復讐するため偽の一揆を起こさせたのでした。

江戸に残っていた秋山は、一人で信祝の屋敷に乗り込もうとしたところを町奉行の大岡忠相(古田新太)に止められます。大岡は老中暗殺に関係がありそうな信祝を内偵しているところで、秋山も協力することになり、実行犯の一人である極蔵(中尾明慶)を捕らえることに成功します。白洲での取り調べで信祝が黒幕であることがはっきりし、なおかつ信祝は日光社参の途中で吉宗の暗殺も企てていることが判明します。

一匹狼の雲隠段蔵(伊原剛志)も加わり、政醇らは城を奪還することに成功しますが、そこへ
信祝自ら尾張柳生千人の兵を引き連れ迫ってきました。政醇らはたったの7人で向かい討つ覚悟を決めるのでした。

日光社参は、初代将軍家康が祀られている日光東照宮に、家康の命日(4月17日)に参拝することで、第3代将軍家光までは毎年のように行われていましたが、その道中にかかる費用・労力・時間は莫大でした。

柳生一族は剣豪を輩出し、宗矩が将軍家の信認が厚く取り立てられ大名に出世しました。その後、柳生本家として奈良に領地を得ています。宗矩の甥、柳生利厳は尾張藩士として徳川家に仕えましたが、大名として出世することがなかったため、この映画の話の中では初めて領地を獲得できると言われ信祝に協力することになったという設定です。政醇は人を宝だと考え信じますが、信祝は人は出自で決まり裏切るものと対局的な描き方がわかりやすい。

1作目、2作目を通して、実在の人物が登場し、いかにもありそうな筋書きを仕立てるところが実にうまい。そこへ、まったくの架空の人物が絡んでエンターテイメントとして盛り上げているところが面白い。

政醇はお咲を側室にしますが、女郎上がりでも人が良ければ卑下したりしません。だったら、正室にすればと思うところですが、正室にすると「人質」として江戸屋敷にいなくてはなりませんので、ずっと一緒にいられる側室を選択したのでしょう。湯長谷藩の江戸屋敷には、妹の琴姫(舞羽美海)が正室の代わりになっていました。

時代劇というと、どこかとっつきにくいと感じる人が多いと思いますが、ほとんど歴史的な知識がなくても十分に楽しめるコメディですし、監督の演出もスピーディでだれずに脚本を生かした出来だと思います。