2023年9月28日木曜日

サムライマラソン (2019)

紀元前450年・・・マラトンの戦いに勝利したアテナイのミルティアデス将軍は、エヴァンゲリオン(朗報)を兵士フィリッピデスに託し元老に知らせた。フィリッピデスは40kmを走り「我勝てり」と告げ亡くなった・・・という伝承を参考にして、1896年の第1回オリンピックにおいて長距離走競技が行われたのがマラソンの始まり。

日本では、1909年の神戸で行われた大会で初めて「マラソン」という名称が使用されました。しかし、さらに遡る1855年に、上野国安中藩で藩主板倉勝明の命により、藩士の修練のため安中城から碓氷峠を超えて熊野権現神社までの往復約30km、標高差1000mの遠足(とおあし)が行われました。これが記録に残る日本での「マラソン」の発祥とされています。

一般に「安政遠足」と呼ばれる安中の遠足を題材にして、参加した藩士たちのさまざまなエピソードを重ねて出来上がったフィクションが、土橋章宏の「幕末まらそん侍」です。この映画は、小説を映像化したもので、興味深いのは監督・脚本はイギリスのバーナード・ローズで、日本からも多くのスタッフが参加して、日本人から見ると「外人が考える変な日本」はほぼありません。

安中藩主、板倉勝明(長谷川博己)は、浦賀に黒船が来航してから日本が侵略される危機感を強く抱き、藩士を集めるように指示します。その知らせに、代々幕府間諜として安中で生活する勘定方の唐沢甚内(佐藤健)は、何か不穏な動きがあるかと即座に知らせを送ります。

しかし、勝明の用件は、士気を高め修練するため遠足大会を開催するというものでした。甚内は知らせを早まったことに気づき飛脚を追いかけますが、すでに関所を抜けた後でした。その頃、城では絵を描くことが好きで、江戸、できることならアメリカに行ってみたいと日ごろから考えている雪姫(小松奈々)が、頑固な父、勝明に抵抗して城を抜け出してしまいます。

側用人の辻村平九郎(森山未來)、健脚が自慢の足軽の上杉広之進(染谷将太)、勘定方上役の植木義邦(青木崇高)、勝明から隠居を勧められた栗田又衛門(竹中直人)などがスタート地点に並ぶ中、自分の誤報によって送り込まれる刺客を止めるため甚内、そして関所を抜けるため野武士の格好をした雪姫もいました。

途中で、実は植木も間諜であったことがわかりますが、甚内の自分のミスだという言葉に耳を貸さず、二人は斬りあいになり植木は甚内に倒されます。そして、関所で正体が露見した雪姫は取り押さえられます。そこへ幕府が派遣した隠密集団が到着し、関所役人を惨殺し領内に侵入します。雪姫は何とか逃げ出したところを甚内に助けられ、辻村らと共に隠密らと戦い倒します。隠密の頭はすでに安中城に向かったため、集まった藩士全員で全速力で城に戻るのでした。

Amazonのレヴューなどを見ると、あまり評判はよろしくない。ただし、どうも監督が外国人ということでの先入観みたいなものが働いているように思えるものが多く、あくまでも安政遠足という史実を話のきっかけにしているにすぎないフィクションと考えれば、十分に娯楽映画として完成度は高いと思います。

例えば、トム・クルーズ人気でヒットはしましたが、「ラスト・サムライ(2003)」などで描かれているのはかなり変な日本でした。それに比べると、はるかに違和感はなく映画としては許容範囲だと思います。

ただ多少強引な展開もあり、間違いの知らせを受けて調査もせずに刺客を送り込み、藩を潰そうとする幕府とか、姫が簡単に城白を抜け出し野武士のような変装したりするのはちょっと現実離れしているという指摘は間違ってはいないと思います。

まぁ、「るろうに剣心」ファンからすると、佐藤健と青木崇高のコンビが直接対決するという憎い演出もありますし、それなりに楽しめました。