エッセイストである森下典子が2002年に出版した「日日是好日 - お茶が教えてくれた15のしあわせ」は、自身が25年間茶道教室に通い、得られた知識・経験などを書き綴ったもので、これを原作に監督の大森立嗣が脚本も担当し映画化しました。
典子(黒木華)は大学生で、物事に消極的でなかなか考えがまとまらない。近所の武田さん(樹木希林)はお辞儀からして丁寧で只者ではないと評判で、母親が武田さんの茶道教室に行くことを勧められます。従妹の美智子(多部未華子)は現代っ子ラシクサバサバして性格で、煮え切らない典子を誘って教室に出向くのでした。
梁上に掲げられた「日日是好日」の書を何と読むのか、どんな意味なのか、まったくわからない二人でしたが、細かいお茶の作法を学んでいくうちに、少しずつ魅力を感じるようになりました。
卒業すると美智子はさっさと就職。典子はやりたいことがはっきりせず、結局フリーター生活。それでも武田教室へは毎週欠かさず通うのです。美智子は3年働くと、見合いをしてさっさと結婚し、教室を辞めてしまいました。30代になり、新人が入ってきたので典子は先輩になりますが、意を決して受けた就職試験に落ちたり、彼氏と別れたり・・・そんな典子をずっと暖かく受け止めてくれていた父(鶴見慎吾)が、急逝してしまいます。
黒木華が20歳から40歳過ぎまでを演じ、年齢に合わせて衣装やメーキャップを変えているのに対して、樹木希林は最初の70歳くらいのイメージのまま最後まで変わることがない。おそらく、意図的な演出だと思いますが、伝統を守り変わることなく続く茶道の象徴なのか思います。
典子の成長を描いているので主役は黒木華なんですが、武田先生を演じる樹木希林が、陰の主役と言って間違いない。茶道の先生ですから、絶えず穏やかな、珍しく(スミマセン)気品のある役柄なんですが、厳しさの中の優しさはまさに適役です。
樹木希林は、映画が公開される1か月前に亡くなったため、この映画が実質的な遺作とされています。この映画のように主役の一歩前をしっかり埋める存在感は唯一無二のもので、樹木希林を失った日本映画の損失は甚大でした。特に、是枝裕和監督は、レギュラー出演者だった希林さんを亡くしてから迷走しているという言い方もできる。
最後まで、劇的なストーリーの展開があるわけではなく、だれにでもありそうな典子の平平凡凡とした日々を淡々と描く作品ですが、だからこそ茶道の魅力の一端が垣間見える佳作と言える映画です。
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2023年9月24日日曜日
日日是好日 (2018)
タイトルである「日日是好日」は、唐の時代の禅僧、雲門文偃の言葉で「毎日が素晴らしい日々である」という意味で、そうなるように努力したいものだということ。もともと釈迦の教えでは、良い悪いの区別はなく、本来毎日が良い日なのです。悪い日と思えるのは、自分の行いの結果であり、それを反省していかしていくことが大切ということ。