麻見和史原作の「警視庁捜査一課十一係シリーズ」の実写化第3弾です。前作に続き監督は内片輝ですが、脚本は穴吹一朗です。前2作との違いは、まず主人公の如月塔子が十一係の中で成長して、全体の指揮をまかされていること。そして、これまで如月を指導してきた鷹野主任が公安に移動することが決まり、これが二人が組む最後の事件となることです。
蝶の力学とは、バタフライ効果(Butterfly Effect)と呼ばれる物理学の用語です。ある力学系にちょっとだけの変化を与えてると、その先に予測不能な大きな変化をもたらすと言うもの。タイトルからして、想像を掻き立てられる最も魅力的なものになっています。
十一係の主任で、如月塔子(木村文乃)の相棒である鷹野秀昭(青木崇高)は、捜査中にかつての相棒を刺殺した犯人を捕らえるために数日後に公安への移動が決まっていました。
そこへ再び異様な殺人事件が発生します。遺体は喉を真横に切り開かれ、そこへ青い花が4本差し込んであったのです。しかも、被害者の妻も行方不明となっており安否不明でした。如月らの捜査チームは、妻の犯行ではないかと考えます。
その夜、新聞社にクラスター16と名乗る人物からメールが届きます。瀕死に見える被害者の妻の写真を添付して、自分が犯人であり助けたいなら指定した場所を探せと書かれていました。そして実際に、衣装ケースに入った遺体が発見されます。彼女も喉を切られ、青い花が4本差してありました。
自分たちの筋読み(事件を推理すること)が間違っていた如月は、新たに分かったことから筋読みをやり直すのです。しかし、重要参考人と考えられた人物も第3の被害者となり同じような状況で遺体となっていました。すべてに後手に回っている捜査、そして主任がもうじきいなくなることへの不安と焦りが如月の冷静さに影を落とし始めます。
これまで1話1時間が5話、全体で約5時間で作られましたが、今回は1話分追加されます。これは第5話の後半から原作にはないドラマのオリジナル・ストーリーがあるから。これが衝撃的で、鷹野の相棒にまつわるある意味本編を忘れてしまうほどの内容で、去っていく鷹野と成長した如月が象徴的に描かれます。
今回も、推理物としてはやや情報提供が不親切なんですが、結局このシリーズは如月塔子の人物像を丁寧に描くこと、そのためのツールとしての事件という位置づけにあるものなので、事件の動機などが後から納得できるものであれば良しとすると考えないといけないようです。
蝶の羽ばたきのような本当にわずかな変化が、次々と連鎖反応を起こして大きな竜巻になってしまうという見本のような事件そのものについては、よく考えられています。医療関係者としては、ちょっと疑問に思うところはありますが許容範囲です。
それにしても、追加のストーリーがすごい。原作を離れて、オリジナルで考えられたものとしては、大変よくできている。十一係から去っていく鷹野を送り出す最後の事件として相応しいし、これからリーダーシップを発揮しなければならない如月の決意も明示されています。公安に移動した鷹野については、別シリーズが作られていますので、独り立ちした如月塔子の新たなストーリーも見たいなと思わせます。