2024年8月18日日曜日

エアガール (2021)


2014年以降は、理由はわかりませんが、航空業界を舞台にしたドラマや映画はしばらくありませんでした。久しぶりだったのは2019年に放送された「ランウェイ24」です。深夜帯の30分の連続ドラマで、出演者も人気者が出ていないので、ちょいマイナーな存在。「チープ・フライト(2013)」では、かなり誇張して描かれたLCC(格安航空会社)が舞台ですが、こちらはピーチ・アビエーションが全面協力して現実に即したLCCならではの描写がされています。タイトルは24番滑走路のこと。

副操縦士の井上桃子(朝比奈彩)は、恋人で和菓子職人の海野大介(犬飼貴丈)、仲間のCAやディスパッチャー(運行管理者)らとLCCならではの日々を過ごしていました。そこへ前職で問題を起こした副操縦士の香月徹也(白石隼也)が転入してきたことで、いろいろと波風が立つ中で成長していくという、実にストレートな内容ですが、大手航空会社との違いが分かりやすい内容です。

同じく2019年にはスペシャル・ドラマ「FLY! BOYS, FLY! 僕たち、CAはじめました」があります。こちらもLCCのジェットスター・ジャパンが協力しました。CAを目指す訓練生(永瀬廉、北村匠海ら)は男性、新人パイロットを目指すのは女性(黒島結菜)となっていて、今までのパターンを逆転させているところが目新しい。ただ、正味90分の中にいろいろな要素を詰め込み過ぎで、どれもが中途半端。まるで連続ドラマのダイジェストです。せっかく、男女の立ち位置を変えた意味があまり見えてこないのが残念。

2021年にはスペシャル・ドラマとして登場した「エアガール」があります。珍しいのは、話が古いと言うこと。敗戦後GHQの管理下で日本の飛行機は運用が禁止されていましたが、1951年に禁止解除となり、ついに日本航空株式会社が発足しました。10月25日にアメリカからリースした「もく星号」が、初めての旅客機として運用が始まります。その際に募集した、日本初の客室乗務員、「エアガール」を主役にして、日本の空を取り戻すべく奮闘する人々を事実に基づいたフィクションとして描きました。

飛行機が大好きでパイロットになることを夢見ていた佐野小鞠(広瀬すず)は、日本航空エアガール一期生の募集に応募し、自前の明るさと熱意によって難関を勝ち抜いて合格します。日本の空を取り返すべく粘り強くGHQや政府と交渉にあたる松木(吉岡秀隆)、初代社長になる柳沢(田中哲司)、そしてパイロットを目指す三島(坂口健太郎)らと共に、エアガールたちも多くの困難に立ち向かうのです。

半分フィクションだとしても、日本の民間航空事業の開拓者たちの努力があってこそ、今の空の自由があるわけですし、敗戦後の日本を復興させた力の一端を垣間見ることができる作品に仕上がっています。正味100分程度ですが、もっと時間を足して映画として仕上げてもいいくらいのクオリティがあるように思います。残念ながらDVD等は未発売ですが、Amazon Prime Videoなどで視聴することができます。

最後に紹介するのは2022年放送の「NICE FLIGHT!」です。協力はJALで、副操縦士と管制官との恋という、こちらもこれまでなかったパターンですが、ストーリー展開はよくあるものです。副操縦士の倉田粋(玉森裕太)は、飛行中に羽田の管制官である渋谷真夢(中村アン)の声に「一聞き惚れ」してしまいます。しばしば機長の喜多見(吉瀬美智子)と組むことが多く、整備士でシングルファザーの酒木(尾上右近)、CAの飯塚(黒川智花)らの仲間に囲まれている。

粋は誰にでも優しく人気者ですが、相手を悲しませないために優柔不断なところがある。真夢は、冷静沈着で感情を表に出さず口数も少ない。次第に距離を縮めていくむずキュンな二人ですが、まぁいろいろと起こるわけです、ドラマですから。飛行機物好きとしては、久しぶりに管制官が日の目を見るので、単純に楽しいことは間違いない。

飛行機物と言っても、さすがにパターンはいろいろですが、基本は夢を実現するために頑張るというのはほぼ共通しています。もっとも、そこがいいんですけど。これからも、見つけたら見逃さないようにしたいと思います。