朱野帰子の小説が原作で、WOWWOWがドラマ化したもの。国立の海洋研究開発機構(JAMSTEC)を舞台に、有人深海潜水艦「しんかい6500」のパイロットを目指す女性のストーリー。監督は山本剛義で、JAMSTECが全面協力してリアルな仕上がりになりました。
天谷深雪(有村架純)は、JAMSTECの中でしんかい6500の運行チーム(6Kチーム)の研修中の新人で、優秀なパイロットだった父親の天谷厚志(時任三郎)の遺志でもある「深海の宇宙」を見つけ出すためにパイロットになろうとしていました。
深雪は、初めてのコパイロット(副操縦士)として抜擢されましたが、乗船する直前に厚志が最後の搭乗で撮影したプライベート・ビデオを発見し、そこに映し出された不気味な光景に愕然とします。そして、潜航途中でパニックを起こしたため探査は中止になってしまい、6Kチームから広報部に移動させられてしまいます。
その頃、研究者だった石堂(遠藤憲一)が、民間企業の陣内(竹中直人)と癒着し、国家予算を獲得するために深海の資源に特化した組織にJAMSTECを改変するため理事長に抜擢されます。石堂は、資源開発部門以外を次々と排除し、陣内の企業が開発した無人探査機を導入することでしんかい6500すらも運用を停止しようとします。
深雪は、地質学者の高峰(井上芳雄)に協力してもらいビデオに写っているものが何を示すのかを探ります。広報の先輩、正田(板谷由夏)も事情を聞いて二人に協力することにします。厚志の最後の航海は石堂と、頼れる先輩パイロットである神尾(筒井道隆)が一緒であったこと、そしてその潜航はJAMSTEC内で記録が無く何者かによって隠蔽されていることがわかります。
そして神尾の口から、厚志が亡くなった理由、記録に残されていない探査の目的、そしてビデオの秘密が語られるのです。深雪と高峰は、本来のJAMSTECの姿に戻すため、そして厚志が最後まで追い求めた「深海の宇宙」を解明するために、石堂と陣内と対峙することを決意するのでした。
宇宙を探査するのがJAXA(宇宙航空研究開発機構)であり、深海を研究するのがJAMSTECです。両者は未知の世界を研究する両輪みたいなもの。ドラマに登場する母船よこすかと探査船しんかい6500は、現在も現役で活躍する実物が登場します。
しんかい6500は1989年にしんかい2000の後継機として就航し深度6500mまで潜航が可能で、パイロット、コパイロット、研究者の3名の定員です。現在もほぼ毎月のように調査に出動し、1回の調査で複数回の潜航を行って、多くの研究成果を上げています。
WOWWOWのドラマは5~6話完結が多く、この話も1時間×6回なので、だれることがなくテンポよく展開します。そして、映画の約2時間よりも余裕がある分、ストーリーのベースを丁寧に描くことができるところが、作品の質の向上に大きく役立っていると感じます。
有村架純はまだまだ「駆け出し」の頃で、可愛さ最強時代なんですが、父親の夢を追いかけ謎を解明する大役を無難にこなしています。周囲をベテラン陣が手堅く固めているので、見ていて安心です。地上波テレビ局の製作でないため、あまり知られていませんがなかなかの良作だと思います。