2024年8月29日木曜日

劇場版 SPEC -結- 漸ノ篇、爻ノ篇 (2013)

さて、いよいよ起承転結の最終章「欠」、いやいや「結」です。「天」に続いて劇場版映画として、しかも各90分の前後編の2部作として公開されました。当然、スタッフ。キャストに変更はありません。

映画公開に先立って、スペシャル・ドラマが作られていて、そちらのタイトルは「SPEC - 零-」です。瀬文が登場する前、未詳は野々村(竜雷太)と当麻(戸田恵梨香)の二人だけという時期の本編の前日譚です。当麻の生い立ち、ニノマエ(神木隆之介)との確執が描かれ、当麻がずっと左手をギプスで隠し三角巾で吊っている理由が明らかにされます。

シリーズの中では、唯一見ていなくても何とかなる作品ですが、出来れば見ておいた方がこのストーリーの世界観をより深く理解することが可能です。また、「SPECシリーズ」がドラマ「ケイゾク」の続編的な側面があることも理解しやすいかもしれません。

それにしても、ある意味連続ドラマのわかりやすさと比べると、複雑すぎる設定はなかなか理解しにくく、好き嫌いがはっきりと分かれそうな感じです。最終的に何となくわかる様なわからない様なモヤモヤが残るし、あえて含みを残している作り方のような気がします。

「天」の最後に登場した謎の白服の男はセカイ(向井理)と名乗り、自らを人間が「神」と呼んでいるような存在だといいます。青池潤も突然大人の姿(大島優子)となり、青池聡子の体を借りて生まれたセカイの仲間と説明されます。また、プロフェッサーJと名乗る謎の人物が、世界中でスペック・ホルダーを抹殺するためのシンプル・プランの道具の開発らしきことをして暗躍しているらしい。

さらには「卑弥呼」と名乗る日本最古のスペック・ホルダー(北大路欣也))が登場し、世界を動かしている秘密会議でシンプル・プランの停止を求めます。各国は表面的にはスペック・ホルダーを危険分子として抹殺しようとしていますが、自国のスペック・ホルダーだけは保護し世界の覇権を獲得しようという腹積もりなのです。

これまではスペックを持つ者と持たざる者との闘いという流れでしたが、実際はスペックを許容する者と排斥する者との闘いであり、それらを越えた所で実は地球そのものの意思と通じ合える「先人類」が仕掛けたファティマ第3の預言の遂行が真のテーマでした。

もともと様々なスペックによって地球 ー ガイアと意思の疎通を図っていたのが先人類で、いろいろな要因によって次第に退化しスペックを持たない新人類になったのです。セカイら先人類は、新人類を虫けらのような存在と考え、自らの欲望を満たすためにガイアを汚すだけの新人類を粛清して世界をリセットするために降臨したのです。

そのためには、当麻の持つスペックが異世界と通じるための「ソロモンの鍵」として必要でした。情け容赦ないセカイらの行為に、当麻はついに自らのスペックを全開放し最終対決に臨むのです。

・・・と、まぁ、できるだけネタバレ無しでストーリーを紹介してきましたが、ネタバレしても何だかよくわからんので、なおさら意味不明だと思います。

テレビ・ドラマとしては視聴率の縛りがありますから、ある程度わかりやすくうけないといけない。そこで「ケイゾク」の続編という被り物で企画を通したわけで、実際は「翔」から始まる人類滅亡を描きたかったというのがスタッフの真意であるなら、それはある程度成功していると思います。

ただし、話を大きくするのにキーワードが多すぎて、かえって複雑になり過ぎたと言わざるを得ない。謎を上塗りしすぎて解決しきれなくなり、最終的にド派手な破壊シーンの中に落とし込んでごまかしたという部分も否定できないように思います。特にこの「結」は、壮大過ぎて描き切れないとして2部構成になったわけですが、やや散漫なシーンが目立ち、回想などの繰り返しも少なくありません。普通に2時間程度の1部構成でも特に問題はないように思いました。

それでも、日本のドラマ・映画で、ここまでこりに凝った企画は思い出せません。CGなどの映像技術の進歩も、この時期の邦画としてはトップクラスで、十二分に話を盛り上げることに成功しています。また、いろいろと各自が考察して楽しむというマニアックな嗜好も満足させる部分があるので、時間がある時にシリーズ全部を一気に見て欲しい作品です。