2024年8月25日日曜日

柳宗民 / 雑草ノオト


柳宗民(やなぎ むねたみ)は、京都出身の園芸家で、NHKの「趣味の園芸」に長年携わった方。2006年に79歳で亡くなっています。

当然、園芸家ですから華やかな植物はたくさん手掛けたことでしょうが、晩年に発表されたこの著書は、一般にはほとんど顧みられず無視されてしまう「雑草」に注目したもの。

あとがきに「名も解らぬ、美しくもない草々をすべて雑草という言葉でくくってしまっているようだ。野の草でも、美しいものは雑草扱いされない。(中略) 雑草という言葉は差別的ではあるが、・・・美人も不美人も差別なく、私たちの身近に普通に見られる草、と解釈していただきたい」とあります。

ありふれたものの中にも光るものを見つけられるというのは、功を成し遂げた人物はさすがだなと思います。いろいろな物から「気づき」を得たいと日頃から思ってはいても、なかなか実現していない我々凡人との決定的な違いです。

この著作は、2002年に毎日新聞社から出版され、その後ちくま学芸文庫にも収載されています。内容は春、夏、秋に分かれていて、全部で60種類の「雑草」が美しいイラストと共に紹介されています。

イラストを描いたのは、1953年生まれで医学、天文学、古生物学など主に自然科学書の企画、執筆等に携わる三品隆司で、親しみやすい柳のエッセイのような文章に華を添えています。

実はこの本を知ったのは最近のことで、京都人のスローライフをテーマにしたドラマ、「ちょこっと京都に住んでみた。」がきっかけ。主演の木村文乃がふと入った古書店で見つけたのがこの本でした。ちらっと映る本の雰囲気に魅了され、早速Amazonで探したら中古で格安に手に入れることができました。

トリビアとか蘊蓄と呼んで「どうでもいい」扱いをしている、簡単に見過ごしているものの中にも、ちょっと生活を豊かにするいろいろなものが詰まっていることを知ると楽しくなってきます。タイトルは「ノート」ですが、「雑草の音」という意味をありそうに思いました。