介護保険の成り立ちは、必ずしも幸せに満ちていたものではなかったのです。高齢化社会を迎え肥大化する医療費を抑制するために政府が打ち出した秘策であり、実質的には医療を分割して見た目の医療費を減らして自己満足に浸っているだけ、というと言いすぎでしょうか。
実際の方法論の詰めがないままにスタートしたのが1999年。混乱の中で「バリアフリー」という言葉だけが独り歩きして、なんでも楽ちん生活が推し進められた結果、お年寄りはさらに弱体化してしまったというのは事実。アンチテーゼとして「バリアフル・ハウス」というものが発表されたりしています。さらに悪質業者がはびこり、お年寄りにいろいろなグッズを売りつけたり、無理やり自宅改造したりとやりたい放題。
当然の結果として、介護保険が今度は抑制の対象となり、ランクの見直しにより介護が受けられないお年寄りを増やしているのです。さらにグッドウィル・グループに見られるような在宅事業者の不正も発覚してきて、現場で働くものの混乱はさらに深まっているのです。
医療と介護が分離したことにより、本来は切っても切れない関係にある両者が混在することは大変難しくなっています。介護保険のもとにある老人施設は、医療が必要になっても入所者に医療保険が使われた場合、そのほとんどの負担を負わなければなりません。持ち出しになれば経営に大きく影響するため、必然的に極力医療の提供に憶病になり、積極的な治療は行われなくなりました。
本当なら、こうすればもっと健康的な生活が送れるだろうお年寄りが、施設で何もされずに寝たきりになっているケースも珍しくないのです。デイサービスだけを提供する事業所もいろいろありますが、人員不足から利用者が健康的な問題をかかえていても、知らぬふりをするようなところも実際に存在しています。
都筑区では医療機関の急増と同時に、老人施設の建設ラッシュでもあります。これらの新たな施設は、当然スタッフの奪い合いとなり、十分な人員の確保ができるのか心配です。それにもまして、利用者が医療を必要とした時に確実に連携をとれる医療機関を確保した上で計画されているのでしょうか。医療機関が母体になっている施設以外では、そのあたりについてはほとんど出たとこ勝負というのが現実ではないでしょうか。
救急医療の現場だけでなく、施設の高齢者救急のタライ回しも実際に起こっています。すべての介護保険関連がだめだというつもりはありませんが、「健康寿命の延長」ではなく「医療費抑制」が前提にある今の制度は「医療崩壊」とともに、もっと議論を重ねられるべきだと、将来の利用者たる自分は思ってしまうのです。
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