マイルスがどんだけ凄い人だったかなんてことは、今更言うまでもないことです。まぁ、あえて説明するなら1940年代の終わりにアンサンブルを重視したクール・ジャズの先駆者に名を連ね、1950年代の終わりには''Kind of Blue''で、行き詰まっていたアドリブをモード奏法で前進させました。
そして1960年代の終わりには、ロックの要素やファンクの要素を取り込み、電気楽器を導入して''Bitches Brew''という傑作を作ったのです。これらが、すべてジャズの歴史と言っても過言ではなく、マイルスそのものがジャズの歴史となっていたわけです。
そんなことはどこにでも書いてあるので、ここでせっせと説明する必要はありません。いわゆる昔ながらのジャズの傑作を一枚と言えば''Kind of Blue''ですが、''Bitches Brew''はこれから来るべき時代を提示したことに最大の価値がある。
自分の場合は、まずはロックから入ったので、高校生の時、発売されて数年がたっていましたが''Bitches Brew''はすんなり聞くことができました。なんかえらいかっこえ~音楽やなぁ、と思った物です。ロックっぽいけど、ちょっと違う。少なくともそれまで知っていたジャズとも違う。思えばまさに''Miles Davis''というジャンルの音楽だったわけです。
最近発売40周年を記念して、豪華コレクター・エディションが発売されました。これまでに2枚組のレコード、ボックスセットのCD、紙ジャケ入りの全CD集などで購入してきたので、今回が実に4回目ということになります。
断言しますが、さすがにこれで最後にしようと思い、いくつかのエディションが発売になったのですが、すべてがそろっている最上級のものを買ってしまいました。オリジナルの演奏とシングル用に編集されたバージョンを追加収録したCDが2枚、未発表のライブのCDが1枚、さらに未発表のライブのDVDが1枚、そしてそしてオリジナル仕様のLPレコードがついているという豪華版です。
ただし、実はマイルス追っかけ者は、自分も含めてこの10数年はいわゆるBootleg(海賊版)が大量に出回っていて、これらの特典音源はまったく目新しい物ではないというわけです。オフィシャルになったという意義はありますが、内容的には耳たこ状態ですから、あくまで所有しているという満足感だけと言ってしまえばそれまでです。
でも、マニアたるものそれでいいのです。今回はそれより重要なことがリマスターの方法なんです。実はこの何年か出回ったCDは全てミックスダウンとかをいじっていて、微妙にオリジナルとはどうも違うらしい。
今回は元テープからのリマスターで、発表時の内容に戻されたということらしいです。もっとも聞いていて、はっきりと違いがわかるわけではありませんが、なんとなく最近に耳になじんでいた印象と違うような気がするのは錯覚でしょうか。
いずれにしても、この音楽はやっぱりかっこいいなぁ。クリニックで流すには無理がありますが、年に数回は聞きたくなるというのは凄いことです。どんなにお気に入りのものでも、最初に何回か聞いた後は、そうそうめったに聞くことはありませんよ。