俳句の重要な要素に「切れ字」があります。
切れ字とは、一番わかりやすいのは「や」ですかね。日本人なら間違いなく知っている有名な「古池や蛙飛びこむ水の音(松尾芭蕉)」にも使われています。
「古池や」でいったんしっかりとした区切りをいれることで、句のめりはりがつきます。もしも「古池に」だったら上五から中七へ連続した感じになり、読み手の想像する場面も狭まる感じです。
切れ字は、リズムを整えたり、強調したり、余韻を残す、そして場面転換するなどの効果があり、大変重視されています。
「や」の他には、代表的なものとして「かな」、「けり」、「なり」、「ぞ」、「がも」など助詞・助動詞がよく使われます。前後を強調したり、余韻を残す働きがあり、俳句の奥深さを表現するのに重要な要素になっています。
他にも切れ字十八字と言われ、「かな・もがな・し・じ・や・らん・か・けり・よ・ぞ・つ・せ・ず・れ・ぬ・へ・け・いかに」が該当することになっています。
しかし、芭蕉曰く「切字に用る時は四十八字皆切字也。用ひざる時は一字も切字なし」だそうで、そのつもりで使えばすべての文字が切れ字になるようです。
日が暮れて風と飛び込む黄金虫
「黄金虫」が夏の季語。本来は季語としては、「金亀子」と表記するのが正しい。日が暮れたので涼しい風が吹き始めたので、窓を開けたら風と共に黄金虫も部屋の中に飛び込んできたという内容。
これは切れ字十八文字が出てきません。でも、切れ字の例句としては適切とは言えませんが、最後が名詞止めになっていて、すとんと落としているので切れ字の効果といえそうです。
例えば、
日暮れかな風と飛び込む黄金虫
とすれば、上五が「かな」で切れることは明白。ただし、中七との連続性が希薄になる印象です。
黄金虫風と飛び込む日暮れかな
これだと場面の連続性は維持できそうですが、主役は「日暮れ」になってしまいます。また黄金虫が日暮れに飛び込む感じがする。
というわけで、季語で主役の黄金虫を強調するには、名詞止めですぱっと終わるのが一番印象深いのではと思ってしまいました。