仲秋の月シリーズ、二十三夜の別名「真夜中の月」の余りものからスタート。最初からギャグみたいな句ですが・・・
#21 幽霊と隣り合わせの真夜中の月
それでは、仲秋の月齢以外の秋にまつわる月関連季語を使っていきます。特に名月と言えばお月見。これに関連したものはたくさんあります。
#22 穂先揺れ千鳥足かな月見酒
芒(すすき)と書きたいところですが、「芒」と「月見酒」で季重なりになるので、ここでは「穂先」という曖昧な表現に留めておきました。揺れてる芒は、酔っぱらっているのかなという内容です。
#23 月の宴月読興じ坏並ぶ
「月読」は、天照大神の弟、月読命(つくよみのみこと)のことで、これも季語になっています。ただし、仲秋の名月にからめると季語としては弱い感じなので使いました。月では、月読命が宴会中。目の前には坏(つき)が並んでいます。坏は古代の食べ物の器のこと。上中下の最初を全部「つき」という音を当ててみました。
#24 箸を止め硝子片手月の宿
「硝子」は「びいどろ」と呼んで、ガラスの酒器のこと。月が良く見える宿にて、月に見入ってしまう様子を詠みました。
#25 今年はズームで分かつ月の友
毎年気心の知れた友人たちと月見をしているという人もいるかもしれませんが、昨今の状況でZOOMを使ってのオンライン月見というのもあるやもしれず。
#26 一杯が二杯三杯月を待つ
#27 川面揺れ酔うているのか月見舟
名月を鑑賞する前に、どんどんお酒が進みますよね。月が出る前の飲み過ぎに注意。屋形船とかで繰り出すと風流ですが、川面に映る月はゆらゆら、ふらふらとして、月も酔っているのかもという感じ。
#28 楽焼の冷めるにまかす月見茶屋
酒無しの月見です。縁台に座り、たててもらった抹茶の入った楽焼の茶碗は、月に見とれているうちに冷めてしまいましたという内容です。
仲秋以外の秋の月もいろいろあります。まずは初秋から。名月の一か月前、旧暦の7月15日は、いわゆるお盆に当たります。十五夜で満月なので、これを「盆の月」と呼びます。
#29 盆の月牛馬より影長く伸び
陰暦の1月と7月の二十六夜は、真夜中に出てくる月を拝むという風習があります。すると阿弥陀如来、観世音菩薩、勢至菩薩が現れて幸運をつかめるらしい。これを「二十六夜待」または省略して「六夜待」といいます。
#30 時の声願掛け逃す六夜待
二十六夜待をしようと月が出るのを待っていましたが、うっかり寝込んでしまい、鶏のコケコッコーで目を覚ましたという残念な話です。
晩秋では、満月の十五夜ではなく、「後の月」と呼ばれる二日前の十三夜が大事。8月の仲秋の名月と共に、これも忘れずに鑑賞しようと言われていました。ちょっと欠けているくらいが乙な物で、風流だと思われていたということ。どちらかしか見ないのは「片見月」といわれてダメらしい。「名残(なごり)の月」とも言われていました。
8月を「男名月」と言うのに対して、9月は「女名月」です。それを強調したのが「姥月(うばづき)」ですが、今ならちょっと怒られそうな表現です。空気も少しひんやりとしてきた頃になります。
#31 後の月一枚羽織り手を合わす
#32 鍵無くば開かぬ錠前片見月
#33 十三夜今日の試験も九十点
#34 大小の帰燕の影絵名残月
#35 月遅れ女名月愛おしむ
#36 更級の惑いにさすや姥月夜
言葉こそ違えても同じ月についてのことですから、細かく違いを言い換えるのは難しい。鍵と錠前は2つ揃って役に立つもの。満点の満月ではないので、惜しいところの90点。燕が去っていく頃なので、渡ってきた時とは違い親子連れなどなど。
姥と来ると、すぐに連想するのは姥捨山の伝説。食い扶持を守るため、年老いた老婆を山に捨てに行くという話はいろいろある。長野盆地の更級(さらしな)も、そういう伝説が残る場所で、平安時代の菅原孝標女による「更級日記」で有名な地。芭蕉も「更科紀行」を著しており、名月を見る場所として注目されてきました。
だいぶ苦し紛れに作っている感じになっていますが、仲秋の名月に特化した月関連はだいたい網羅したと思います。