月に関連する季語を使って百句作る・・・夏井いつき氏から出された「入門試験」だと、勝手に思い込んで挑むことにしました。とりあえずは、仲秋の期間の月齢、つまり月の満ち欠けを追っかける形でスタートして、10句で満月、十五夜まできました。
今回はその続き。満月になったら、翌日は月は左から少しずつ欠け、月の出も毎日50分ほど遅れ始めます。それが「十六夜」で、そのまま「じゅうろくや」と読んでもいいのですが、ここは「いざよい」と読む。
#11 十六夜に今年はこれで良しとする
いきなりつまらん句ですけど、「昨日、中秋の名月を見忘れた~」っていう時ありますよね。翌日、あらためて空を見上げて、これを自分にとって今年の名月としようということ。さらに、翌日になると「十七夜」、「立待月(たちまちづき)」です。満月のときから1時間半くらい月の出が遅れているので、出てくるのを立って待っていることらしい。
#12 立待に言い訳無しの遅刻かな
立って待っていられるくらい遅れただけじゃん。いちいち言い訳なんかせんよ、と月が言ったとか言わないとか・・・それでも、ぱっと見にはまだまだ満月に近いかもしれません。陰暦8月18日になると「十八夜」、あるいは座って一服していると出てくるので「居待月(いまちづき)」と言います。
#13 お隣の屋根越しほのか居待月
この一日ずつの違いを詠むと言うのはかにり難しく、少しずつ月の出が遅れ、欠けてくるので明るさが減るということ。となりの家の屋根がほんのりと白々となってきたので、月が出たんだなぁと思いましたよという感じです。次は「十九夜」、「臥待月(ふしまちづき)」です。月の出はそろそろ夜9時を過ぎてきますので、もうゴロっと横になって待つ感じなので「寝待月」とも言います。
#14 臥待や捻れば水が出る如し
#15 晩酌の〆の肴は寝待月
もう開き直りです。どうせ待ってりゃ出てくるんだろ、蛇口を捻れば水が出るのと一緒だよ。もっとも、最近は蛇口はほとんどレバーですけどね。もう一つは、夕食もほぼ終わりに近づいたので、出てくる月を〆にして今夜は寝ようということ。次は「二十日月」、「更待月(ふけまちづき)」です。月の出は午後10時過ぎで夜も更けた頃ということ。
#16 更待や薄影ひそむ子の寝息
仕事を終えて遅くに家に帰ったら、こどもはもう寝ていて、薄い月明かりがさしていましたという感じ。ここまで来ると、もう月もだいぶ欠けた部分が多くなって8月22~23日に再び半月になります。満月に向かう時は「上り月」でしたが、ここでは右側だけが明るく見える「下り月」、「下弦の月」、あるいは「(下の)弓張月」」です。
#17 左手は上りで右は下り月
#18 弓張の月に合わせる楊枝かな
これもしょーもない句。普通に左手の親指の爪を見ると爪半月が上りで、右手の親指だと下り月に見えました、チャンチャン。楊枝を矢に見立てて、下の弓張月にあわせるようにかかげてみましたよ、ということです。「二十三夜」の月は、12時を過ぎて出てくるので特に「真夜中の月」という季語もあります。
#19 真夜中の月鏡に浮かぶ心
真夜中に合わせ鏡をしてのぞき込むと未来の自分が見えるなんて話があったりするので、月も鏡に見立て、月が映った部屋の鏡の間をのぞき込む・・・怖いことになるかもしれません。満月を過ぎると夜が明けても月が見えていたりしますが、特に左側だけの三日月の頃を「有明月」、あるいは「朝月」と呼びます。
#20 明星と有明月にうつうつし
眠れずに徹夜してしまったのか、やたらと早くに目が覚めてしまったのか、明け方頃に月と共に明けの明星(金星)が見えましたという句です。月齢は29.5日で一周しますので、30日は再び元に戻って「朔日ごろの月」になります。8月1日に使った「初月」は、仲秋の名月に向かっていくときにしか使いません。
仲秋の月齢編は何とか1周して、やっと20句。月百句はまだまだ続きます。