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2022年9月25日日曜日

俳句の勉強 42 月百句 #47~#60


何と言っても仲秋の名月が月の俳句の主役ですけど、それとは直接の関係の無い「月」もたくさんあります。それらを拾い上げていきたいと思いますが、いずれも秋の季語になります。まずは、シンプルに「月」で始めます。

#47 逆さ月一つの波紋水鏡

湖でも池でも、あるいはそこらに置いた水のたまった盥(たらい)でもいいんですが、月が逆さまに映っている。そこに、ちいさな一つの波紋が生じて水面が揺れました。小さな虫のせいかもしれませんね、くらいの感じです。

#48 若き日に獣にならん月に吠え

狼男が月に向かって吠えているでもいいんですけど、若いうちは獣のように貪欲にいろいろなことを吸収してもらいたものだと思ったということ。

#49 茜夜に月をのせたる坊主かな

これは花札の話。「月に雁」の札は、まさに仲秋の名月の満月を表した葉月(8月)の札。空が真っ黒じゃなんだかわからないと思ったのか、空は真っ赤なんですよね。下半分は黒っぽい坊主頭のような山なんですが、実はこれは芒原らしい。

#50 サンルーフこの夜ばかりはムーンなり

自動車の天井が窓になっている車・・・いわゆるサンルーフと呼ばれているオプションですが、主たる目的は太陽の光を取り込むことと、眺めをよくすること。ただし、名月の時には、月を見ることができるのが便利です。

#51 赤毒蛾螻蛄翻弄月夜哉

「月夜」という季語を使った、ちょっと攻めた句です。どこが攻めているかというと、見ての通り全部漢字だけ。「あかどくが、おけらほんろう、つきよかな」と呼んで欲しい。小学校の学芸会で「月夜のおけら」という演目がありました。赤色のタイツに身を包んだ悪役の毒蛾の役が自分。主役のオケラをいじめちゃうという話で、細かいストーリーは忘れました。赤いタイツが嫌で嫌で・・・

#52 山裾に草の浮き立つ月代や

「月代」を「さかやき」と読むと武士の丁髷のこと。ここでは「つきしろ」と読む月の季語で、月が出る頃に、東の空が明るく見えてくるという意味。

#53 夕月や淡い影追い帰路急ぐ

「夕月」は、厳密には仲秋の上弦の半月までの最初の1/4の月のことで、月の出が早いので薄明るい頃に見ることが多い月。普通に買いやすい蒲鉾の銘柄にもありましたね。光も弱いので、なおさらできる影は薄いということ。

#54 月光に金の彩色穂先揺れ

月光と言えば、月光仮面と来るのは団塊の世代。自分の場合は、忍者戦隊月光です。月の光で稲とか芒の穂先がキラキラしている様子。

#55 無垢纏う月下の艶香待ち侘びる

何か難しい事を言よるなぁ、こういうところが初心者なんですかねぇ。「月下」は「つきのした」なら秋の月の季語なんですが、最初に思いつくのが「月下美人」で、これだと晩夏の植物の季語です。この句だと、どうみても月下美人のことなので、純粋な月からはそれてしまいますが、めったに花を咲かせない白い花と月の白い光を混ぜ込んだらこうなりました。

#56 月の蝕誰が食べたか怪奇なり

「月蝕」も季語です。いついつ月蝕ありますとニュースになると、一瞬でもみたいなと思います。月が欠けてきたのは誰かが食べちゃったせいかもしれない。何て怪奇(皆既)なことよのぉ・・・

#57 月影に言霊浮かび諷詠す

季語は「月影」ですが、昭和人なら千昌夫の「月影のワルツ」を思い出します。月影と言うと、ちょっとロマンチックで、急に言霊が降りてきて素晴らしい句ができた(らいいなぁ、無理だけど)という句です。

#58 隠れたるアルデバランに月の暈

月の周囲に淡い光の輪が見える天文現象を月暈(つきがさ)、ハロー、白虹と言い、季語としては「月の暈」を使います。月暈が出来るとおうし座α星であるアルデバランが、そのハロー
の中に隠れてしまいそうになっている・・・写真をネットで見ました。

#59 落月の余韻を映す眼かな

月の入り、月没のことを季語では「月落つ」あるいは「落月」と言います。太陽の日没ほど印象的ではないのですが、眼に余韻を残すこともあるだろうということ。

#60 月さやか水せせらぐや山のやど

月が鮮やかな様子を「月さやか」と季語で表現します。都会で見るよりも、どこか山の温泉に出かけて澄んだ空気の中で見ればいっそう鮮やかです。

月百句、あと40句。まだまだ続きます。