2022年10月29日土曜日

俳句の勉強 55 立冬で八苦


初冬の時候を表す季語、「立冬」について基礎知識を仕込んだところで、早速、俳句の実作に挑んでみます。

立冬で連想する事は・・・ここから暦の上では冬になるわけですが、まだ秋が深まった頃で、真冬のイメージではありません。とりあえず、日常では衣替えをするというのが一般的。

立冬に楠匂う箪笥かな

衣替えをするために箪笥をあけたら、防虫剤の匂いがしたということ。今でも楠の天然成分の防虫剤がありますが、昭和の頃に一番よく使われたのがパラゾールという商品。楠に含まれる樟脳が含まれていました。匂いが苦手という人は多かったと思います。

立冬の箪笥楠香り立つ

「立冬に」とするのか「立冬の」とするのかで印象が変わります。「立冬に」とするとその後が主役になってしまう感じがするので、「立冬の」で始めた方が良さそうに思いました。また、「匂う」というのも風情がないので「香り」の方がいいかもしれません。「立つ」を繰り返すのも強調されていいかもしれません。

自販機の赤いボタンに冬立ちぬ

飲料水の自販機の中身がホットに入れ替えられる頃で、商品のボタンが赤くなる。色が変わると冬になったなぁと思いませんか。どうも、いずれも小さくまとまっていて、いよいよ冬だという大きな季節の変わり目には相応しくないかもしれません。

立冬は吐く息白くなりにけり

立冬に上着一枚新調す

立冬や旬の食べ物皆季語

もう、やけくそみたいな句ばかり。そもそも冬来るで思いつく物が限られているせいで、どれも類想・類句であることは間違いない。立冬が来ると・・・そうそう、幼いこどもがいる家庭では、七五三がいよいよ来週に迫って来ます。親としては晴れ着で着飾ってあげて、すくすくと成長してもらいたいと願うものです。

冬立ちぬ衣桁にかけた紅三つ身

衣桁(いこう)は着物をかける道具。三つ身は小さなこども用に作った着物のこと。立冬になったので、用意した真っ赤な着物を衣桁にかけて心待ちにするという感じです。でも、何か「冬立ちぬ」が弱い感じで、「三つ身」が主役っぽい。

紅三つ身飾る衣桁に冬立ちぬ

これでどうでしょうか。「冬立ちぬ」が主役になって、着物を飾ったことで冬の到来、来週の七五三が間近になったことを感じているという具合です。

今回は主役が何かを意識してみたのですが、何が主役なのかは、省略された部分を補填してみると主語と述語がわかりやすい。前者は「冬が立ったので、衣桁にかけた紅三つ身が待ち遠しい」となり主語は「紅三つ身」です。後者は「紅三つ身を飾る衣桁に、冬が立った」ですから主語は「冬」ということ・・・になると思いません?