2022年10月3日月曜日

俳句の勉強 46 鯛焼きで苦心


鯛焼きとは・・・言わずと知れた庶民的和菓子の代表選手。今回挑戦している季語が「鯛焼き」で、冬の季語になります。

元はと言えば、明治42年創業の麻布十番にある波花屋が元祖本元らしい。となると、俳句の季語として誰が最初に使ったのか気になるところですが、少なくとも大正時代になってからでしょうし、歳時記に収載されるようになったのは昭和からかもしれません。

ただ、あまり浪漫がある言葉ではありませんし、類想・類句を大量生産しやすい季語のように思います。まずは歳時記で名句を鑑賞します。

前へ進む眼して鯛焼三尾並ぶ 中村草田男

何で三尾なんだろうか。友人二人と分けて、三人で食べるということでしょうか。

鯛焼きの鰭よく焦げて目出度さよ 水原秋櫻子

鯛焼きには本当の鰭はありませんが、祝い事によく使われる鯛の姿焼きのイメージをかさねたんでしょうか。

鯛焼きの頭は君にわれは尾を 飯島晴子

普通は頭の方にあんこが詰まっています。尾まで餡があると凄い事のように喜ばれますが、実際は餡ある部分とない部分で味わいの違いを楽しむというのが本来らしい。

鯛焼きと弓張月と感じ合ふ 藤田湘子

弓張月は半月のことなので、まさに見た目が似ていて想像したんでしょうね。どれも名人と呼ばれる俳人の句なんですが、まぁ確かにそうですよねとしか言いようがないと言ったら怒られますかね。もっとも、それ以上につまらない句しか思いつかないので、頭が上がらないわけですが・・・

鯛焼を割って立つ湯気冬の暮

もうそのまま、見たまま、誰もが思いつく典型的な内容です。鯛焼きと冬で季重なりです。

鯛焼をこだわらないと怒られた

鯛焼きならどんなんでもいいんじゃないの、どうせ美味しいんだからと開き直り。

塩水に逃げた鯛焼き溶ける哉

毎日、毎日、僕らは鉄板で・・・こんな歌も思い出したりして、海に逃げたら溶けちゃいますよね。もう、ひどすぎてダメだ、こりゃ。

冬夕焼鯛尾の餡にほくほくし

唯一、ちっとはまともかなと思うのがこれ。「冬夕焼(ふゆゆやけ)」が季語になるので、鯛焼きと直接書かずに「鯛尾の餡」と弱めた表現を使いました。

結局、名人の句はそれなりに名句なのだと再確認することになったということです。