ただし俳句の場合は、形容詞は主観的表現になりやすいため、使い方には注意が必要です。「美しい」という形容詞を使う場合、それを他人は美しいと思わないかもしれません。自分が美しいと思った状況を、具体的に「満開の桜」のように表現することが推奨されます。
口語の場合は、活用の仕方は一種類。
未然形「かろ(う)」
連用形「く(なる)」または「かっ(た)」
終止形「い」
連体形「い(こと)」
仮定形「けれ(ば)」
命令形は無しです。
例えば「美しい」の場合は、「美しかろう」、「美しくなる」または「美しかった」、「美しい」、「美しいこと」、「美しければ」という具合。
言い切る場合は口語では「い」なのに対して、文語では「し」で終わります。さらに文語の場合は、活用法がク活用・シク活用の二種類です。
まず、ク活用。命令形もあります。
未然形「く(は)」または「から(ず)」
連用形「く(なる)」または「かり(けり)」
終止形「し」
連体形「き(こと)」または「かる(べし)」
已然形「けれ(ども)」
命令形「かれ」
例えば、「早し」の場合は、「早くは」または「早からず」、「早くなる」または「早かりけり」、「早し」、「早きこと」または「早かるべし」、「早けれども」、「早かれ」となります。
次に、シク活用。
未然形「しく(は)」または「しから(ず)」
連用形「しく(なる)」または「しかり(けり)」
終止形「し」
連体形「しき(こと)」または「しかる(べし)」
已然形「しけれ(ども)」
命令形「しかれ」
「美し」では、「美しくは」または「美しからず」、「美しくなる」または「美しかりけり」、「美し」、「美しきこと」または「美しかるべし」、「美しけれども」、「美しかれ」となります。終止形が「美しし」ではないことに注意。終止形以外はク活用とシク活用は同じ変化になります。
「または」とした未然形「かる」、連用形「かり」、連体形「かる」は、すぐ後に助動詞に接続する場合に用いられ、特にこの場合をカリ活用と呼ぶ場合があります。
さらに、連用形の「く」が「う」になるウ音便、連体形の「き」が「い」になるイ音便があります。
形容詞をたくさん使って、いい加減な例句を用意してみます。
美しき赤きはなびら寂しかり
上五は「美し」のシク活用連体形、中七の「赤い」は「赤し」のク活用連体形、そして下五の「寂しかり」は「寂し」のシク活用終止形(カリ活用)です。ただし、「~しかり」という使い方はよく見かけるものの、実は文法的に間違い。文末で終止形のはずなので、「寂し」で止めるのが正しい。近代以降の音数を稼ぐための誤用です。多少意味が変わってしまいますが、「寂しけれ」で余韻をもたすと、文法的には正解になります。
美しい花びら赤し寂しけれ
今度は、シク活用連体形イ音便の「美しい」とク活用終止形の「赤し」で、句切れを作って、最後にシク活用已然形の「寂しけれ」で寂しいのかもしれないなぁとまとめた感じになりました。
もっとも、「赤い」は許されるとしても、「美しい」とか「寂しい」とか主観的な表現ですので、まったくダメダメ句です。そもそも季語が入っていませんしね。例句からのイメージを膨らませて、もう少し俳句らしくしましょう。
花筏一片二片流れ去る
季語の「花筏」は、川べりの散り落ちた桜の花びらが、一所に流れ着いて集まった状態で、川面が赤くなって風情があります。その中の一片ずつ、また流れの中に戻って去っていくのが、成長したこどもが巣立っていくような一抹の寂しさを思い起こさせたというところです。
まず、ク活用。命令形もあります。
未然形「く(は)」または「から(ず)」
連用形「く(なる)」または「かり(けり)」
終止形「し」
連体形「き(こと)」または「かる(べし)」
已然形「けれ(ども)」
命令形「かれ」
例えば、「早し」の場合は、「早くは」または「早からず」、「早くなる」または「早かりけり」、「早し」、「早きこと」または「早かるべし」、「早けれども」、「早かれ」となります。
次に、シク活用。
未然形「しく(は)」または「しから(ず)」
連用形「しく(なる)」または「しかり(けり)」
終止形「し」
連体形「しき(こと)」または「しかる(べし)」
已然形「しけれ(ども)」
命令形「しかれ」
「美し」では、「美しくは」または「美しからず」、「美しくなる」または「美しかりけり」、「美し」、「美しきこと」または「美しかるべし」、「美しけれども」、「美しかれ」となります。終止形が「美しし」ではないことに注意。終止形以外はク活用とシク活用は同じ変化になります。
「または」とした未然形「かる」、連用形「かり」、連体形「かる」は、すぐ後に助動詞に接続する場合に用いられ、特にこの場合をカリ活用と呼ぶ場合があります。
さらに、連用形の「く」が「う」になるウ音便、連体形の「き」が「い」になるイ音便があります。
形容詞をたくさん使って、いい加減な例句を用意してみます。
美しき赤きはなびら寂しかり
上五は「美し」のシク活用連体形、中七の「赤い」は「赤し」のク活用連体形、そして下五の「寂しかり」は「寂し」のシク活用終止形(カリ活用)です。ただし、「~しかり」という使い方はよく見かけるものの、実は文法的に間違い。文末で終止形のはずなので、「寂し」で止めるのが正しい。近代以降の音数を稼ぐための誤用です。多少意味が変わってしまいますが、「寂しけれ」で余韻をもたすと、文法的には正解になります。
美しい花びら赤し寂しけれ
今度は、シク活用連体形イ音便の「美しい」とク活用終止形の「赤し」で、句切れを作って、最後にシク活用已然形の「寂しけれ」で寂しいのかもしれないなぁとまとめた感じになりました。
もっとも、「赤い」は許されるとしても、「美しい」とか「寂しい」とか主観的な表現ですので、まったくダメダメ句です。そもそも季語が入っていませんしね。例句からのイメージを膨らませて、もう少し俳句らしくしましょう。
花筏一片二片流れ去る
季語の「花筏」は、川べりの散り落ちた桜の花びらが、一所に流れ着いて集まった状態で、川面が赤くなって風情があります。その中の一片ずつ、また流れの中に戻って去っていくのが、成長したこどもが巣立っていくような一抹の寂しさを思い起こさせたというところです。