2022年10月1日土曜日

俳句の勉強 45 活用形のいろいろ

少しずつ文語の文法を勉強しますが、いや、もう、へこたれそうで、続くか自信がありません。とは言え、先に進まないと、いつまでもダメダメですから、今回は活用形を学びます。

すべての単語は、10種類の品詞のどれかに分類されるわけですが、その中で文脈の中で語尾変化する場合を活用と言い、活用形を持つ品詞は用言と呼ばれる動詞、形容詞、形容動詞、そして付属語の助動詞の4つです。これらをまとめて活用語とも呼びます。

さて、活用形は基本的に6つのパターンがあって、それが未然形、連用形、終止形、連体形、已然形(口語だと仮定形)、命令形です。あー、何か、何十年も前に居眠りしながら聞いたような気がします。

一番普通の活用は、口語では母音のア・イ・ウ・エ・オを使う五段活用で、文語ではオが抜けた四段活用です。動詞の「書く」なら、口語での場合には、「書かない(書こう)・書いて(書きます)・書く・書けば・書け」です。文語になると、「書かず・書きて・書く・書く・書けば・書け」となり、語尾変化は「かきくくけけ」と呪文のように覚えた記憶が蘇ります。

口語で五段活用するもの中には、文語では四段活用の他に、ラ行変格活用、ナ行変格活用、下一段活用というものも出てきます。

動詞「有り」はラ行変格活用で、「有らず・有りて・有り・有る・有れば・有れ」となり「らりるれれ」です。他に「居(を)り」、「侍(はべ)り」、「いますがり」の四語です。

動詞「死ぬ」はナ行変格活用で、「死なず・死にて・死ぬ・死ぬる・死ぬれば・死ね」となり「なにぬぬね」となる。他は「往ぬ(去ぬ)」だけ。

下一段活用は口語にもありますが、文語では動詞「蹴る」だけで、「蹴ず・蹴けり・蹴る・蹴ること・蹴れども・蹴よ」で、「けけけけけけ」です。

口語の下一段活用は、文語だと下二段活用です。動詞「消ゆ」は「消えず・消えけり・消ゆ・消ゆること・消ゆれども・消えよ」で「ええゆゆゆえ」です。

口語の上一段活用になるのは、文語では上一段活用と上に段活用に分かれます。上一段活用は、動詞「見る」の場合は、「見ず・見けり・見る・見ること・見れども・見ろ」で、「みみみみみみ」です。上二段活用は、動詞「消ゆ」なら、「消えず・消えけり・消ゆ・消ゆること・消ゆれども・消えよ」となって「ええゆゆゆえ」です。

あと少しですから、我慢してください。口語でも文語でも、動詞「来る」だけはカ行変格活用になります。「来ず・来けり・来・来ること・来れども・来(来よ)」となって、「こきくくくこ」です。口語なら「来ない・来ます・来る・来ること・来れば・来い」ですよね。

最後にサ行変格活用となるのが、動詞「す」と「おはす」の二つで、「す」は「せず・しせり・す・すること・すれど・せよ」となり「せしすすすせ」です。

俳句をすべて現代語だけで作っているなら、たぶんそんなに文法を意識しなくても困ることはあまりないと思いますが、そもそも「切れ字」として多用する「や、かな、けり」がいずれも歴史的な言葉ですから、文語調にならざるをえません。

また、文語体の方が、一文字に込められる意味に多様性があるため、数少ない文字数で多くの内容を含めたい俳句では利用したくなる機会が多くなるのも必然。ただし、雰囲気だけで文語を用いてしまうと、気が付かないうちに間違った活用をしていることは大いにある話なので、十分に注意しないと恥ずかしいことになりかねません。

紅梅のしだれし枝や鳥も来ず 正岡子規

遅桜見に来る人はなかりけり 正岡子規

根岸にて梅なき宿と尋ね来よ 正岡子規

「来ず」は「来ない」ということで未然形。「来る」は「人」にかかっているので連体形とわかりやすい。「来よ」は文末で、「尋ねて来なさい」という命令形です。そんなことは判別できなくても困らないと思うかもしれませんが、じゃあこれはどうでしょうか。


おそるべき君等の乳房夏来る
 西東三鬼

「来る」は「くる」と読むのか「こる」と読むのか。実はこれはカ行変格活用の「来る」ではなく、ラ行四段活用の「きたる」の終止形です。衣替えをして、肌の露出が増えた女性たちに圧倒されている作者が見えてきます。