夏井いつき氏が詳しく解説していましたが、「写真俳句」は「写真と共に鑑賞する」ための俳句です。つまり、写真を見て誰もが感じるところは省略可能で、ある意味写真を季語のような扱い方が出来るということ。写真に直接添えられるキャッチコピーと言えばわかりやすい。
例えば桜の写真を見て一句となると、「桜咲く・・・」とか「桜散る・・・」みたいなフレーズが俳句の中に必要で、それはたいてい季語であったりすることが多くなります。句を鑑賞する人は、写真は見ていないという前提です。
ところが、桜が満開の写真に寄せる「写真俳句」ということだと、桜が満開に咲いて美しいといった部分はすでに写真から伝わっているので、たった17音の俳句に含めるのはもったいない。さらにその先に思いを馳せる句を作る必要があるということになります。
軽井沢と言えば、旧軽。旧軽と言えば、銀座通りが有名です。その中でも、ミカド珈琲は本来は日本橋に本店がある昭和23年創業の老舗喫茶店。昭和27年に夏のみの営業で旧軽に店を出しました。ジョン・レノンを始め、多くの文化人が常連となった店です。
もう何年も前、夏の観光シーズンに、まだお客さんが少ない昼前に訪れた時の写真です。いずれも晩夏の季語を使いました。まずは、この写真を見て一句。
白南風や珈琲落ちる音揺らぐ
「白南風(しらはえ)」が季語で、梅雨が明けて流れてくるゆるやかな南風のこと。静かな一時に、コーヒーをドリップする音がポタ、ポタと聞こえますが、ちょっとずつリズムが揺らいでいるなあという感じ。喫茶店でなくても、自宅でもOKという雰囲気です。
涼風を探す銀座に茶の香り
もちろん「涼風」が季語です。暑くなってきたので、涼風を求めて歩いていると、茶の香りが漂ってきたので、ちょっと休憩したいかなということ。銀座は旧軽銀座のつもりですが、当然東京の銀座でもかまいません。
では、写真俳句として作ってみたのがこちら。見る人が見ると写真は、旧軽銀座のミカド珈琲だとわかります。そこまでわからずとも、半袖の人がちょっと写っているので季節は夏。
片蔭を辿りて香る老舗哉
季語の「片蔭(かたかげ)」は、街並みの片側だけに日陰ができている様子です。旧軽銀座は、ちょうどちんな片蔭ができる街並みです。旧軽銀座を日陰の方を選んで歩いていくと、コーヒーの香りがする老舗のミカド珈琲にたどり着くよという感じで、写真に添えるお店の宣伝のつもりで考えました。
基本的に大きな違いは無いかもしれませんが、より写真の状況に合うように考えるということだと思います。写真が無いと、片蔭の街並みは想像できませんし、何が香るのかもわからない。ましてや老舗が何の店かも不明ということになります。