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2022年11月5日土曜日

俳句の投句結果 1


俳句を作る上で、兼題というテーマが決められていることがあります。もちろんテーマが無く、好きに作れと言われても、なかなかネタを見出しにくいですから、プロの俳人でもなければ途方に暮れてしまいます。

兼題はほとんどの場合には季語が選ばれているわけですが、その言葉を聞くと頭の中に映像が浮かんでくるものとこないものがある。例えば、「桜の花」みたいな言葉から、当然春の満開の桜のイメージが連想できるわけですが、誰でも同じような映像からスタートするので類想・類句に陥りやすい。

一方、時候・天文に関する季語は明確な映像を持たないものが多く、例えば「初冬(はつふゆ)」と言えば10月、あるいは「神無月(かんなづき)」のことで、普段からいろいろなものを細かく観察していないとここから何も思いつかずに困惑するだけになってしまいます。

という、言い訳を長々としておいて、そろそろこれまでの投句の結果発表第一弾と行きたいと思います。今回は、愛媛県松山市が運営する「俳句ポスト365」の分。松山市は正岡子規をはじめとして、有名な俳人とのかかわりが深く、夏井いつき先生の地元です。

投句は中級者以上と初級に分かれていて、選者は前者は夏井いつき先生、後者は夏井先生の長男で俳人の家藤正人先生です。当然、自分は初心者ですから初級に挑戦しました。

まずは2022年6月の兼題、「夏の海」です。初級の投句数は4155句、投句人数は1702人です。

夏の海驚き払う飛ぶ海月

落選。この時は、けっこういいなと当然思っていたわけですが、あらためて見ると動詞が3つあって、全部の単語でぶつ切れ俳句です。季語が「夏の海」と「海月」で季重なり。しかも、どちらかというとクラゲの方が主役っぽい。映像としては想像しやすいと思いますが、俳句としては成立していませんでした。

夏の海泣く子澄ませば傘の波

入選。初級の入選は、俳句の体をなしているというほどの評価だろうと思いますが、とりあえず嬉しいことに変わりはありません。あらためて考えると、中七がまずい。

迷子が泣いている声を、耳を澄ましてて探しているという状況を詠みたかったのですが、「泣く子」が「澄ましている」状況になっていて内容が伝わらない。「耳を澄ます」という言葉にこだわりすぎて盛り込み過ぎた感じで、もっと単純に「泣く子探して」とか「泣き声かすか」などくらいが良かったかもしれません。

続いて、2022年7月の兼題、「原爆忌」です。初級の投句数は4116句、投句人数は1680人でした。

銀翼にフラッシュバック原爆忌

落選。う~ん、悪くはないと思うんですけど、何がダメなのか・・・「銀翼」とか、「フラッシュバック」という比喩表現が伝わりにくいのかなぁ。空を飛ぶ飛行機を見つけた時に、爆弾が投下される恐怖が思い出されるということなんですが、カタカナ言葉の使い方も難しいのかもしれません。

原爆忌手を止め未了の「黒い雨」

入選。小説の名称、つまり固有名詞を鈎括弧で囲むというのは、ちょっと冒険でしたが、何とか合格を貰えました。だから強気になるわけではありませんけど、これはまぁまぁイケてるんじゃないかと思います。

そして2022年8月の兼題は「芒」です。初級の投句数は3874句、投句人数は1614人でした。

待宵に鬼子母授けし芒木菟

落選。いゃ、もぅ、これは凝り過ぎ。考えすぎ。意味不明。言葉遊びになってしまい、そもそも兼題の「芒」が埋もれてしまいました。芒の類想を回避しようと悪戦苦闘したことだけが伝わるかもしれません。

芒原阿吽の息に靡きけり

入選。「芒原」から始まるススキがなびく様子は、山ほど類句がありますが、「阿吽の息」でというところがオリジナリティ。ススキの花言葉は一般的には「生命力」ですが、「心が通じる」というあまり知られていないもう一つの花言葉から、「阿吽の呼吸」に発想を飛ばしたところがわかれば面白いと感じてもらえると思います。

ちょっと気になっているのは、自分としては珍しく「切れ」を使って終わっているところ。「けり」は過去の感動ですので、「(以前に)なびいたんだなぁ」という感じです。よく登場する「かな」は現在の詠嘆なので、「靡くかな」とすれば「(今目の前で)なびいている」となります。どっちがいいのか、まだ決めかねています。

2句ずつ投句して、入選率50%ですから、十分に合格と言って問題ないと思いますが、基本的に初級は、季語を含む五七五という定型をしっかり作れということが目標です。9月の兼題「鰯雲」の初級発表はまだですし、入選以上の特選を貰ったわけではありませんが、今後は内容の勝負を含めて中級以上に投句すると宣言しておきます。