「invention」と聞いてすぐに思い出すのは、J.S.バッハの「インヴェンツィオンとシンフォニア BWV772~881」です。バッハは本来鍵盤楽器の練習用に、調の異なる2声と3声のそれぞれ15曲ずつからなる曲集を作りました。
もともと「インヴェンチオーネ」は、「創意・工夫」という意味で、バッハが曲集を作るヒントとしたと言われているのが、フランチェスコ・アントニオ・ボンポルティの作品。
「インヴェンチオーネ」と題されたボンポルティの作品10が作られたのは1712年で、それぞれ短い数楽章からなる10曲からなるヴァイオリンのための曲集です。バッハが「インヴェンツィオンとシンフォニア」を作曲したのは、ライプツィヒに行く直前の1723年頃と言われています。
ボンポネティは、1672年に生まれ、成人してローマで聖職者になるべく修行するかたわら、コレッリからヴァイオリンを習ったようです。33歳で故郷トレントで司祭となり、1749年にバドヴァで亡くなりました。
あまり詳しい評伝は紹介されていないのですが、ヴィヴァルディも生涯を宗教者としてすごしたように、バロック期の音楽家は宗教と一体となっていた人が多い。
ボンポルティの「インヴェンチオーネ」は、基本的に独奏ヴァイオリンに目立たない程度の伴奏をする通奏低音(チェンバロ)が加わった物で、全体にヴァイオリンの曲芸的な技巧的な凄さを楽しむ者ではありません。
おそらく、初心者~中級者がいろいろな基本的テクニックを習得するために、教育的な利用を想定していたと思います。
このようなあまり知られていませんが、音楽史に記録されるイタリア人作曲家を忘れられないように発掘するのがイタリアのDynamicレーベルですから、当然ボンポルティについても「Bonporti Edition」と銘打ったシリーズを制作しています。
その第4巻が、「インヴェンチオーネ」を含むもので、演奏は古楽器集団であるAccademia I Filarmoniciで、ヴァイオリン独奏はアルベルト・マルティーニという人。このあたりは、例によってネット社会の今でもあまり情報がなくてよくわからないのですが、普通に堅実な演奏というところでしょうか。