2023年4月17日月曜日

Amandine Beyer / J.S.Bach Sonatas & Partitas (2010)

J.S.バッハの音楽は、リアルタイムには古臭いと評されることがあったとか・・・

たぶん、対位法と呼ばれるバロック中期まで盛んに用いられた手法を多用していたからなのかも。対位法とは「複数の旋律を、それぞれの独立性を保ちつつ、互いによく調和させて重ね合わせる技法」とあり、バッハの鍵盤曲などでは、よくもまぁ、左右の手で別々のメロディをよく弾けるもんだと感心させられます。

実際、バッハが活躍するバロック後期には、他の作曲家は一つの主旋律に対して和音を用いる方が一般的になっていたようです。実際、バッハほどあからさまな対位法は、いろいろ聞いてもそれほど目立つものはありません。

バッハがとことん突き詰めた音楽理論にフーガというのがありますが、対位法的な技巧をさらに発展させたものという言い方は正確ではないかもしれませんが、少なくとも間違いではありません。

フーガは全体に似たような旋律あるいはリズムが主旋律に絡むように登場する形式で、複数の旋律が登場する多重フーガともなると、かなり高度な音楽理論が駆使しないと曲として成立しなくなってしまいます。

簡単に和音を出せる鍵盤楽器ではまだわかりますが、バッハの怖い所は、基本的に単音楽器であるヴァイオリンにフーガを弾かせるところ。それが、顕著なのが無伴奏ヴァイオリン・ソナタです。

バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータは、まぁ、古今東西名の知れたヴァイオリン奏者では必ずと言って良いほど録音を残している。それぞれ3曲づつの計6曲で、パルティータは5~8楽章で、様々な舞曲形式が登場します。特に有名なのはパルティータ第2番の終曲、十四分に及ぶシャコンヌでしょう。

ソナタは4楽章形式で、いずれも第2楽章がフーガです。特に第3番では11分という長さを伴奏無しの独奏で弾き切らないといけないので大変なことこの上ない。

今回はアマディーヌ・ベイエの演奏を楽しみました。正直言って、上手・下手はよくわからない・・・というか、どれを聞いてもすごいなぁと思ってしまいます。

ヴァイオリン独奏なのに、もう一人ヴァイオリン奏者がいるんじゃないかと疑いたくなる。まるで二人で弾いているように聞こえるということは、フーガの演奏としては完璧ということなんでしょうね。

それにしてもバロック・ヴァイオリンのガット弦の音に慣れると、モダン・ヴァイオリンのスティール弦の伸びやかな明るい音が嘘っぽく聞こえてしまいます。