後に一時、タルティーニと共何プラハに滞在したこともあるようですが、大変優れたチェロ奏者と評価されていたにもかかわらず、詳しい経歴はほとんど知られていません。
ヴァンディーニの作品は7つのチェロのための協奏曲だけが現存していて、いずれもバロック後期に登場する、従来の荘厳な雰囲気よりも優美さを重視した典型的なギャラント・スタイルで作られています。
圧倒的にヴァイオリンが花形楽器であったイタリア・バロックの中で、ギャラント・スタイルによってはじめて、それまで低音部の補強目的でしかなかったチェロにも陽があたるようになったのかもしれません。
7つのすべての協奏曲をおさめる録音というのは、やはりイタリアのDynamicレーベルにしかできない仕事のようで、Amazonで探せる唯一のCDがこれ。演奏はタルティーニの協奏曲全集を完成させた L'arte Dell'Arco で、独奏チェロを弾くのはフランセスコ・ガッリジョーニ。
ガッリジョーニは、他にも L'arte Dell'Arco との共演がありますし、ジュリアーノ・カルミニョーラとのコラボもあり、古楽系チェロ奏者としては一定の評価があるようです。
ここで興味深いのは、わざわざ「with underhand bow grip」とアルバム・ジャケットに記載されているところ。現代のヴァイオリンやチェロの演奏では、弓を上から手をかぶせるように(内返しして)持つことが一般的です。それに対して、古いスタイルでは弓を下から手で支えるように(外返しして、逆手で)持つのが一般的だったようです。
ヴァンディーニが弓を下から持つスタイルだったことは、当時の音楽史家が記載しており、またヴァンディーニに演奏の様子書いた絵(CDジャケット)でもはっきり確認できます。ガッリジョーニは、音楽を再現するために奏法にもこだわっていることの現れとして評価したいポイントです。