2023年4月18日火曜日

Giuliano Carmignola / J.S.Bach Sonatas & Partitas (2018)

モダンとバロックでヴァイオリンは何が違うのでしょうか。ネットで検索すると、詳しい説明がたくさん出てきますので、ここでは基本的なことだけあらためてまとめておきます。

まず形状。モダンはほぼ規格化されて、ほとんどがネック長は130㎜、表板のエッジから駒を立てる位置まで195㎜です。顎を乗せる顎あてが付属しています。基本的に丈夫なスティール弦を用います。弓は中央がやや凹んだ形になります。

一方バロックは、一定の形が決まっていないのですが、一般にネックは太め短めで、駒は低めでカーブが少ない。羊の腸から作るガット弦を用います。弓は直線的かやや中央が膨らんでいることもあります。

楽器から出てくる音は、バロックの方が音量が小さく共鳴が少ない。そして、細かい雑音が多めで、高音部で倍音と呼ばれる共鳴音が出やすいため線の細いひなびた感じになりやすいというのが特徴です。

実際のところ、だから何?! と思うかもしれませんが、演奏法にも違いが出てくるので全体の雰囲気はけっこう違って聞こえます。

現代バロック・ヴァイオリン奏者としては、男女を問わず最高ランクの巨匠に鎮座するカルミニョーラですが、イタリア人としてヴィヴァルディ中心のレパートリーが多かったので、ドイツ・バロックについてはあまり目立ちませんでした。

とは言っても、バッハについては、2000年にチェンバロ伴奏があるヴァイオリン・ソナタ、2007年にはアバドと共にブランデンブルグ協奏曲全曲、2013年にヴァイオリン協奏曲という具合に、基本的な部分はしっかり録音を残してきました。

そして2018年についに満を持して登場したのが、無伴奏ソナタ&パルティータ全6曲です。これまで、ドイツ・グラモフォンの古楽系レーベルであるアルフィーフからリリースしていましたが、これは初めてのグラモフォン盤で、ジャケットにはあのいかにもという黄色い枠内にアルバム名と奏者が印字されています。

後年に学者によってつけられたカタログ番号順に、ソナタ-パルティーターソナターパルティーターソナターパルティータと交互に演奏されるのが通例ですが、カルミニョーラはソナタだけパルティータだけとまとめています。ですからCD1は66分、CD2は81分とかなりでこぼこ。この意図は不明ですが、それぞれ形式が違うので、こういうまとめ方もありというところ。

内容は、ヴィヴァルディの「四季」の時のように、ある意味エキセントリックな聞く者を驚かせるようなことはしていません。堅実に丁寧にバッハが紡いだ一音一音をしっかりと再現しているかのようです。

使っている楽器の関係なのでしょうが、よりモダン楽器との音の差が際立っているように思います。モダンの澄み切った綺麗な音に慣れていると、やはり雑味のある感じの印象を持つかもしれませんが、バッハ自身が耳にしていた音という意味でバロック・ヴァイオリンに軍配を上げたいと思います。