古楽ヴァイオリンの第一人者の一人であるキアラ・バンチーニが、教育・研究の本拠地にしていたのがスイスのバーゼル・スコラ・カントルムという音楽大学でした。そしてバンチーニの元でアマンディーヌ・ベイエと共に薫陶を得て、現代の古楽ヴァイオリンを牽引する存在となっているのがレイラ・シャイエです。
ベイエよりも1歳年下の48歳ですが、二人は仲の良いライバル関係にあるようで、互いに切磋琢磨して現代の古楽を盛り上げていることは間違いない所です。
古楽器の場合、現代楽器よりも響きが弱めなので、あまり長く音を伸ばすのは得意ではないというのが一般的な見解。ですから、自然と演奏が早くなりやすい。カルミニョーラの「四季」は約37分で、イ・ムジチの43分より6分も早くなっています。
もちろん使用する楽器の特性だけではなく、演奏者のいろいろな考えも反映しているわけですが、シャイエの「四季」は冒頭、いきなり予想を裏切りゆったりとしたスタートです。しかも、小鳥のさえずりの効果音も入れて情感たっぷりというクラシックでは珍しい構成。
だからと言って、全体で40分程度なので、やたらと遅いわけではない。楽章内でのテンポの揺れは最小限におさえ、楽章ごとにスピードのメリハリをつけている感じです。また、アドリブといってもいいくらいの独奏パートを随所に入れて聞きなれたこの曲に新しさを吹き込んでいます。
共に演奏する古楽集団はチェンバロ奏者のダニエラ・ドルチが率いるムジカ・フィオリータで、シャイエとはレギュラー・セッションかのように息がぴったりで、お互いにやりたいことがしっかりと伝わっているようです。