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2023年4月21日金曜日

Alina Ibragimova / J.S.Bach Sonatas & Partitas (2008,09)

バロック中期まではヴァイオリン奏者はどのように演奏していたか。いろいろな古い絵画に、演奏者が描かれているので、比較的よくわかっています。

現在のヴァイオリンは鎖骨の上で構え、顎で挟むようにします。一方、バロック時代には、簡単に言えば、鎖骨の下に当てて構えていました。

当然、安定性が良くないので、左手のネックを手前にずらして高い音程を出すのにはそれほど問題はありませんが、音程を下げていくときは体から左手が遠くに行くために不安定になるとという欠点がありました。

バロック後期になると、しだいに鎖骨上に構える姿勢が一般化していったようです。その分、高度な技巧的な演奏が可能になったと言えそうです。

技巧的な部分は、ヴァイオリンを弾かないと理解できないので、あまり偉そうなことは書けません。ただし、物理的な進化がもたらしたのはよりボディに共鳴して大きな音量が得られるようになったことが関係します。

よく「鳴る」ようになったことで、テンポを落としてじっくりと響かせることが可能になり、長く延ばした音を美しく聞かせるために、ほぼすべての音にヴィブラートをかけるようになったのがモダンな演奏の特徴だろうと思います。

そのあたりを逆に考えれば、おのずとバロック・ヴァイオリンの演奏方法も想像できる。モダンと比べれば、音を長く延ばすことは得意ではなく、その結果ヴィブラートの必要性も少ない。おそらく、教会のような反響の大きい場所が演奏の場として使われていたことで、その欠点が補えていたのではないかと思います。

もちろん、モダン・ヴァイオリン奏者も聞かないわけではありません。アリーナ・イブラギモヴァは、1985年生まれの現在37歳。バッハの無伴奏は24歳の時に録音しています。ソリストとしては、王道のレパートリーを若くして取り揃え、自ら四重奏団も結成し活躍しています。

イブラギモヴァは、古楽系の演奏に比べて確かにゆったりとしていて、ヴィブラートはほどほど。モダン楽器の利点を生かして、古楽的な演奏に近づいているという印象を持ちます。

また、共鳴の良さを生かすテクニックとして、音の強弱を積極的に織り込み、情感を生み出すことにも成功している演奏だと思います。