2023年6月18日日曜日

アマルフィ 女神の報酬 (2009)

フジテレビ開局50周年記念として、かなり力のこもった(お金がかかった)映画。何しろ、全編イタリア・ロケで、イタリア名所巡りは当然のこと、スタジオ撮影もイタリアで行われました。

キャストも豪華です。主演の外交官、黒田康作は織田裕二、娘を誘拐されるのは天海祐希、ほとんど最初からネタバレなので隠しませんが、犯人は佐藤浩市、イタリアの日本大使館の職員が小野寺昭、佐野史郎、大塚寧々、伊藤淳史、そして戸田恵梨香。外務大臣は平田満、黒田の友人の記者に福山雅治、黒田の上司は電話の声だけですが中井貴一。さらにコンサートで歌うのは、当時人気絶頂のサラ・ブライトマンです。

原案は真保裕一で、織田裕二とは「ホワイトアウト(2000)」以来。ただし、実際の脚本も担当しているものの、これを自分の作品としたくないという意向でクレジットされていません。ですから、何とこの映画は脚本家のクレジットが無いという珍しいものでいろいろと物議をかもしました。

実は映画公開と前後して、DoCoMo動画として「アマルフィ・ビギンズ」という5話からなる約45分のサイド・ストーリーがあります。黒田康作という人物を紹介するためのもので、北京で行われている日中貿易交渉を邪魔するマカオの裏社会のボスと交渉する特命を受けた黒田が、カジノ王クーリーとポーカー対決をするというもの。

この話によって、10年前のメキシコ大使館人質事件で、黒田は独自の判断から人質一人を死なせてしまったことがわかります。以来、黒田は表立って解決できない難題を専門に担当する一匹狼の外交官として世界各地を転々としているらしい。しかし、クーリーは、一人を死なせたが、黒田が動かなければ全員が死んでいたと理解を示すのでした。ここへの出演は松重豊、山本未來です。松重は最近は飄々とした演技が人気ですが、ここでの強面の迫力は見物です。

マカオの件を片付けた黒田は、上司からの電話でクリスマス目前のイタリアに飛べと指令さました。ちょうどG8外務大臣会議が開催されることになっていて、何らかのテロが起こる可能性が示唆されていたのです。で、ここからは映画本編の話。

会議に出席するための川越大臣を迎えるので大使館はてんてこ舞い。イタリアに到着したばかりの黒田もミーティングに参加し、会議関係の警備などを確認していきます。その頃、日本から娘のまどかを連れた旅行者、矢上紗江子がローマに到着するやいなや、美術館で娘を誘拐されてしまうのです。

したかたがなく、黒田は邦人保護のため紗江子の面倒を見ることになってしまいます。身代金を持って二人はローマ中を引き回され、さらにローマから南下した海岸沿いの町、アマルフィに向かうのです。紗江子の元には、かねてからの知り合いである藤井が見舞いに訪れますが、その後から紗江子は黙り込んでしまうのです。

様々な情報から、いずれも国中のセキュリティを担っているミネルヴァ警備会社の内部に何かあると考えた黒田は、監視カメラのオリジナルを確認するために、すべてをコントロールしている会社の中枢部に入りますが、何と紗江子がいきなり警備システムをシャットダウンしてしまうのでした。

さてさて、全部で30億円くらいかかったらしい豪華絢爛たる映画なんですが、興行収入は36億円。何か、フジテレビとしてはがっかりな結果でした。

監督の西谷弘は基本的にフジテレビの演出家ですが、フジテレビがらみの映画の仕事は多数あって、それなりに堅実な成果を出していますが、この映画に限ってはやはり現地スタッフが多数入ったこともあり、どうも雑な仕事ぶりが目につきます。

とは言え、「踊る」以後の織田裕二のシリアスなキャラクターとしては、やることに多少無理はありますが、それなりに魅力があることは否定しません。この後、連続ドラマにもなって、さらに映画版第2作まで作ってますから、「踊る」以来のヒットを狙う亀山千広社長(この映画の時は執行役員)の力は相当入っていた・・・けど空回りということでしょうか。