シリーズ3作目。前2作の監督だった橋本一が降りて、今作は主として大河ドラマ「鎌倉殿の13人」などのNHKでの仕事が多い吉田照幸が担当しました。脚本は今まで通り古沢良太です。なお、副題はありません。
3作の中では最も充実した内容で、一番良い・・・と思います。ストーリーの展開は凝っていますが、矛盾はなく、このシリーズの特徴の一つである地方のハード・ボイルド感がよく出ている。
ただし、監督が交代したせいか、アクション、エロスと言った東映ハードボイルト感はやや後退しているところは、賛否が分かれるところかもしれません。
札幌ススキノで探偵稼業をしている「俺」(大泉洋)は、バー「ケラーオオハタ」を根城として、バーにかかってくる電話によって仕事の依頼を受ける。高田(松田龍平)は大学の研究員ですが、ほとんど仕事らしい仕事はせず、何かにつけ俺の仕事を手伝っています。
いきなりハードな場面からスタート。毛ガニを運搬するトラックに同乗する女子大生のレイコ(前田敦子)。トラックの前に停車していた車に運転手が近づくと、いきなり銃撃されてしまう。意味ありげに毛ガニの甲羅を取り除くシーンで場面転換(いかにも何か隠していた感)。
今回の依頼は高田(松田龍平)の後輩の学生から、恋人のレイコが行方不明のため探してほしいというもの。気楽に引き受けて、俺(大泉洋)が調べ出すとレイコはモデルのバイトをしていたらしい。事務所は体裁を変えた売春クラブのようなところで、俺が出向くと帰りに襲われてしまうのです。
事務所を仕切っていたのは岬マリ(北川景子)と名乗る女で、実は昔、自暴自棄になっていた頃に俺のかけた言葉によって生きる目的を見つけたのでした。この事務所は暴力団とつながりがある北城グループの傘下にあり、マリはトップの北城(リリー・フランキー)の女なのです。
マリを尾行すると、レイコを匿っていたことがわかりますが、マリは最初の事件が解決したらレイコを自由にすると言うのです。そして、今度は北城グループのNo.2が死体で発見されます。表向きは、彼がボスを裏切り、覚醒剤を隠した毛ガニを奪ったものの、処分に困り自殺したと思われました。
しかし、俺はこれらの事件の犯人は、いろいろな情報から、いずれもマリではないかと本人に直接問い詰めます。マリは逆に俺に助けてほしいと言うのでした。俺がかつてかけた言葉によって、マリは生きる目的を見つけ出し、そのために北城グループを潰そうと言う考えだったのです。
前2作で不満が残ったヒロインは、今回は前田敦子・・・じゃなくて、北川景子。スマートな態度をとる美人で、でも一心に思いつめ固い決意を秘めている女性ということでは、ベストなキャスティングではないでしょうか。
ただ前田敦子に関しては、ほぼ本筋に絡まない。巻き込まれたお気楽な女子大生という扱いなのは、ややもったいないところ。もう少し、使い方があったんじゃないかと思ってしまいます。
おふざけシーンは控えめで、全体が締まっている印象です。相変わらず、ド派手ではありませんが、俳優同士の殴り合いのアクションはがんばっている。北城グループの最強の格闘家(志尊淳)とは、最初は「強いもん。かなわない」と弱音を吐く高田が、リベンジ・マッチでは当然勝つのですが、ちょっと勝ち方に笑いの要素が混ざったのは残念かもしれません。
高田がニュージーランドに研修留学する話が序盤からあり、このシリーズも見納めかと思いましたが、最後の最後、エンドロールの後にちゃんと落ちがありました。