原作は東野圭吾による書下ろしクライム・サスペンス。監督は「SPEC」シリーズなどで知られる堤幸彦。
原子力発電に頼り豊かな生活を送っている我々は、一方で原子力に危機感を募らせている。東日本大震災でそのリスクを嫌と言うほど味わった日本人に、あらためて原子力と正面から向き合っていけるのかを問う、社会性の強いテーマを持ちつつ、アクション映画としての娯楽性も追求した作品。
錦重工の技術者、湯原(江口洋介)は、妻と息子の高彦を伴って、自らが設計に携わった新型大型ヘリコプター、通称「ビッグB」の自衛隊への引き渡し式に向いました。
かなり早くに到着したため、暇を持て余した高彦は格納庫に入り込みビッグBに乗り込んでしまいます。しかし、その時無人のはずのビッグBが始動し、高彦を乗せたまま空高く舞い上がってしまう。ビッグBは福井県敦賀にある新陽原子力発電所の上空に達すると、ホバリングして停止するのでした。
そして日本政府に対して、「天空の蜂」を名乗る者からFAXが届きます。その内容は、新陽以外のすべて原子力発電所を非可逆的に使用不能にすること。受け入れなければ、爆薬を積載しているビックBを新陽に墜落させるというものでした。
ビッグBが燃料切れで墜落するまで8時間ほどの猶予しかありません。新陽に集まったのは、湯原らの他に元湯原の同僚だった、原子力技術者の三島(本木雅弘)もいました。所長の中塚(國村隼)、消防関係者なども含め懸命の回避策が話し合われます。
ニュースでこどもが乗っていることが報じられると、天空の蜂から救出のチャンスが与えられ、最大限接近した自衛隊のヘリコプターから、決死の自衛隊員が何とか高彦をキャッチして救出することが出来ました。錦重工内の捜査員は、誰かの協力が無ければ今回の事件は不可能と考え、社員一人一人をチェックしていくうちに、総務課女性社員の赤嶺(仲間由紀恵)の関与が浮かび上がる。
地元警察は、ラジコン操作に熟練した元自衛官の雑賀(綾野剛)を特定し住むアパートに急行します。踏み込まれそうになった雑賀はアパートを爆破し、コントローラーを持って逃亡するも道に飛び出したところをトラックにはねられ死亡します。墜落まで2時間を切っている中、壊れたコントローラーは新陽にいる湯原のもとに届けられ、湯原はコントローラーを修復しようと試みるのでした。
原子力発電所の安全神話は、大震災で脆くも崩れ去りました。この映画(原作は)、安全性に対して正面から疑問を投げかけるもので、震災が無ければその製作は容易には認められなかったかもしれません。
こどもが乗っているという時点で、こどもが何とかするみたいな解決を図れば荒唐無稽な陳腐なものになってしまったかもしれませんが、多少非現実的ではありますが物語の半ばで救出されたことで何とか興味を後半に引き継ぐことが出来ました。
最終的な犯人の動機については、多少ばたばたと提示されて説得力不足感はありますが、もともと政府が要求を呑むはずがないと考えていたのなら、もう少し過激な行動もあってもよかったのかもしれません。エピローグで湯原と成長した息子(向井理)のシーンは、震災を印象付ける目的だと思いますが、やや蛇足感はあり余分。
それでも、今一度、原子力発電のリスクを思い出し、どう向き合っていくのかを考える一つの機会として、意義深い映画だと考えます。