2023年6月24日土曜日

サイレント・トーキョー (2020)

秦建日子による「And so this is Xmas」を原作とし、連続爆弾テロ事件を描くクライム・サスペンス。監督は「SP」シリーズを手掛けた波多野貴文で、見ていると群衆のシーンなどは何となく雰囲気が似ています。

最初に言ってしまうと、けっこう重厚なテーマがあって、犯人の動機なども一筋縄ではいかない。それを正味90分程度にまとめ上げたのは褒めてあげたいところではありますが、まぁ普通は1時間×5回程度の連続ドラマでいくのが適当な感じがしました。

12月22日、恵比寿の商業施設の広場。爆弾を仕掛けたとというメールを受けてテレビ局のスタッフ、来栖(井之脇海)と高沢(金井勇太)が行ってみると、山口アイコ(石田ゆり子)と名のる女性がベンチに座っている。アイコは自分の代わりに高沢を座らせ、ベンチに爆弾が仕掛けてあり、30キロより軽くなると爆発すると言うのです。しかし、警察が撤去しようとした途端、爆発が起こりますが、音と光だけの疑似爆弾でした。

さらにアイコは来栖にブレスレットを装着させ、それも爆弾で、自分たちは監視されていて犯人の言うとおりにしないと爆発すると言い、来栖に犯行声明をしゃべらせ総理大臣との会見を要求するビデオを公開します。要求が通らなければ、12月24日午後6時、渋谷ハチ公前広場を爆破する。恵比寿のは脅かしだったが、今回は戦争だという内容でした。

しかし、世界情勢を考えるとこれからは戦争ができる組織を持つことが必要だと唱えるタカ派の総理(鶴見辰吾)は、一切犯人の要求にこたえることはない。渋谷署の刑事、世田(西島秀俊)、泉(勝地涼)らは聞き込みの中で、須永(中村倫也)という青年に目を付けます。

そして、いよいよその時間になり、渋谷のスクランブル交差点は野次馬が大勢集まり、警察が必死に通行を規制しようとしますが、お祭り騒ぎの様相を呈していました。そして、いよいよその時間となり・・・一瞬の間をおいて、大爆発が起こり一帯は修羅場と化すのでした。

石田ゆり子と西島秀俊に爆弾とくれば、真っ先に「MOZU」を思い出しますが、今回は二人の接点はありません。寡黙で心の隙を見せない須永に絡むのが、広瀬アリスと加弥乃と言うOL二人組。さらに重要な役所で、ある意味主役と言えるのが佐藤浩市なんですが、なかなか説明しにくい。

最初に言ったように、一番の問題はこの内容でこの時間では短すぎるということ。渋谷の大爆発からエンディングまで、事件としては半日以内の出来事になると思いますが、犯行の動機を説明することにほとんど費やされるので、いろいろな事件解明までのステップがあまりにも簡単。

しかも、重要な登場人物が、現在と過去(20年程度昔?)で配役が異なることで、えっ? これ誰の話? という感じになってしまうことがやっかい。世田刑事の過去にも何かありそうなんですが、事件と関連は無いのであえて盛り込む必要があるのか疑問がある。

一番の見所は渋谷大爆発。巨大なそっくりなセットと大勢のエキストラを動員しての撮影だったそうで、知らないとよくぞこんな撮影ができたもんだと驚いてしまいます。爆発そのものはCG合成ですが、さすがに肉片が飛び散らないお行儀のよいシーンです。

まぁ、テレビのスペシャル・ドラマと思えばがんばったと褒めたいところですが、映画としてはちょっと・・・