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2023年6月5日月曜日

ミックス。 (2017)

映画って・・・いや、そんなことを語れる立場ではないだろうと怒られそうですが、監督のものなのかプロデューサーのものなのかとよく議論されますが、基本的に自分は監督のものと思っている。

ですから、制作を兼任する監督であれば、評価はともかく見るべき作品と言える。例えば、クリント・イーストウッドを好きなのは、まさにそこ。日本だったら、是枝裕和などが思いつきます。

さらに完璧さを求めるならば、当然、脚本も担当してもらいたい。小説と違って映像がある分、文章に起こして台詞で説明しなくても伝わるポイントを絞り込むことが映画の醍醐味の一つ。そこは脚本の力が大きく働くところ。

今まで、あまり脚本家には注目していなかったんですけど、日本で今、最も注目されている脚本家の一人が古沢良太。2023年のNHK大河ドラマ「どうする家康」の原案・脚本を担当しているので、まさに話題性急上昇です。

テレビでは、「リーガル・ハイ(フジテレビ)」や「デート〜恋とはどんなものかしら〜(フジテレビ)」が古沢のオリジナル脚本でヒットしました。映画では原作者が別にいる「ALWAYS三丁目の夕日」シリーズ、「探偵はBARにいる」シリーズが知られています。

でも、やはり古沢の真骨頂は、自分のアイデアから生まれたオリジナル脚本物。この映画は、スポ根、いやロマンス、コメディ、もしかしたら人間成長ドラマ・・・いろいろな要素が「ミックス」されて、ある意味定型的な展開ですが、引き込まれる要素が散りばめられた良作と言えます。

不器用で会社の卓球部のエースにふられ、失意のまま帰郷した富田多満子(新垣結衣)。鬼コーチだった母(真木よう子)に鍛えられ卓球の天才少女と言われていましたが、中学校の時、母の死と共に卓球を辞め、普通の幸せを夢見ています。どこかに元彼(瀬戸康史)への未練も残している。

元ボクサーの萩原久(瑛太)は、妻(山口紗弥加)の上司を勘違いで殴って離婚。仕事を転々として、土木作業現場の仕事に就くことになり、偶然に多満子と出会います。元妻と彼女の連れ子に未練を残している。

死んだ母が営んでいた卓球クラブは、経営難で残った会員はわずか。元ヤンで医者の妻になった吉岡弥生(広末涼子)は、セレブな生活を装うことに疲れています。トマト農園を営む落合夫妻(遠藤憲一、田中美佐子)は、亡くした卓球好きのこどもが忘れられない。優馬(佐野勇斗)は、落ちこぼれの高校生で打ち込めるものが無い。

彼らはクラブを繁盛させるために、全日本大会に出場し注目を集めるために、ミックス・ダブルスのペアを組み練習を始めるのですが、さすがにそんな簡単に勝てるわけがなく、全員初戦敗退してしまいます。

しかし、もう一度自分を取り戻すため1年後の大会に向けて猛練習を始めるのでした。行きつけの中華料理屋の夫婦(蒼井優、森崎博之)が元中国代表の落ちこぼれだったことがわかり、彼らのコーチのもとみるみる力を付けていくのでした。

いよいよ大会が迫ってきたという時、元彼に復縁を迫られる多満子。元妻から大会当日にある就職面接を紹介される萩原。それぞれが残していた未練を克服するため、大会出場を土壇場でキャンセルしてしまいますが、それは新たな未練の始まりでもあったのです。

監督は、古沢良太との仕事が多い、主としてテレビの仕事をしている石川淳一。スタンダートな演出で、可もなく不可もなくですが、奇をてらったことはしないので安心感はあります。映画と言う短い時間を有効に使うため、回想シーンの使い方はうまい。

新垣結衣のファンの人は、セーラー服姿だったり、変顔だったり、試合の鬼気迫る表情などが見れるのも楽しみでしょう。多満子の父親に小日向文世、工事現場主任に斎藤司、元彼の新ペアに永野芽郁、対戦相手に吉田鋼太郎、中村アン、鈴木福、谷香音、生瀬勝久、そして本物の卓球選手も多数登場というところも見所になっています。