外交官黒田康作シリーズは、映画から始まり、連続ドラマを経て最終章の映画第2弾です。前作は、観光地を巡りつつも単なる観光映画に終わらず黒田康作のキャラクターを鮮烈に印象付ける、ある意味スター、織田裕二の醍醐味を楽しませてくれました・・・が、興行的には今一歩でした。
久しぶりの日本での仕事を終えて、黒田が活躍するのはスペイン。監督は前作から引き続き西谷弘。連続ドラマの視聴率もやや低調でしたが、第2作も興行収入は第1作の半分。それでも第1作ほどではありませんが、邦画のクライム・サスペンスとしては悪い出来ではないと思います。
パリ・サミットで、マネーロンダリングの規制強化を狙う日本の外務大臣(夏八木勲)のサポートをしていた外交官、黒田康作(織田裕二)は、雪に閉ざされるアンドラ公国(スペインとフランスの間の小国)で、警視総監の息子、川島(谷原章介 )が殺されたため急遽向かわされることになります。
実は、川島の死は自殺でしたが、地元のビクトル銀行の新藤結花(黒木メイサ)は、ホテルで強盗に襲われたかのように偽装し、パソコンを隠して第一発見者を装います。現場にはインターポールの神足誠(伊藤英明)も派遣されてきました。
しかし、アパートで男に襲われた新藤は、黒田に助けられバルセロナの領事館に保護されることになります。黒田はフリー・ジャーナリストの佐伯(福山雅治)から、ビクトル銀行がマネーロンダリングに関与しているいろいろな黒い噂、そして神足が日本で不正を内部告発したため飛ばされたことを聞き込みます。川島はビクトル銀行の手先に騙されマネーロンダリング目的で、巨額の投資詐欺に遭っていたのでした。
新藤は、領事館の安達(戸田恵梨香、前作から出世)の目を盗んで逃亡。新藤にGPSを仕込んでいた神足は追い、それを見かけた黒田もバルセロナ市内を追跡します。二人に捕らえられた新藤は、偽装工作を自供し保護を望みます。
取り調べに向かう最中、三人は武装集団に襲撃され、警察の中にもビクトル銀行と通じている者がいることが判明。新藤は、ついにアンダルシアで行われるビクトル銀行と国際テロ組織との取引があることを話す。しかし、新藤は黒田を騙し、神足に取引を申し出るのでした。
テレビは視聴率、映画は興行収入が正義なので、評価が低いのはしょうがない。実際、低評価の理由は、謎が複雑すぎてかわりにくいこと、主役の織田裕二以上に黒木メイサ、伊藤英明がストーリーの中で目立っていることがありそうです。
複雑なのは、マネーロンダリングにまつわる銀行間の競争だけでもややこしいのに、そこへ日本の警察や政界のスキャンダルにまで幅を広げてしまったことがある。まあ、最終章ですから出来るだけ話を盛りたかったということでしょうか。今回も、スペイン語が飛び交うので、字幕なしでの視聴が困難なことも、関係しているかもしれません。
美しいヨーロッパの風景をいろいろ見れるのは愉しみのひとつですが、このシリーズはあくまで舞台の一つとして利用するだけで、観光地巡りは深入りしていないところは潔い。もう少し、黒田の外交官として活躍を中心に続編があってもよかったかもしれません。