2023年6月11日日曜日

ストロベリーナイト (2013)

テレビのスペシャル・ドラマの評判が良かったので、連続ドラマ化された誉田哲也作の「姫川玲子シリーズ」が、最後に劇場版として登場しました。タイトルはスペシャル・ドラマと同じですが、原作となった「インビジブルレイン」が副題となっています。

シリーズを通して監督の佐藤祐市、脚本の龍居由佳里などは一緒。キャストも、連続ドラマ版と同じ。スペシャルドラマがテレビとしては限界に挑んだ感じで良く出来ていたので◎だったんですが、さてさて映画はと言うと・・・

都内で3件の殺人事件があり、暴力団竜崎組の跡目争いに関連した内部抗争が疑われます。しかし、姫川玲子(竹内結子)は「犯人は柳井健人」であるというタレコミ電話を受けますが、上司の今泉係長(高島政宏)や橋爪管理官(渡辺いっけい)から、柳井のことは忘れろと厳命されてしまうのです。

柳井は9年前に殺された柳井千恵という高校生の弟で、警察資料は柳井に関する資料が破棄されていました。古い新聞や雑誌を調べた姫川は、知恵が父親から性的暴力を受け殺されたらしいこと、その父親は捜査中に自殺したこと、被害者の一人が千恵の恋人だったことなどを知るのです。

姫川班の菊田(西島秀俊)、石倉(宇梶剛士)、湯田(丸山隆平)、葉山(小出恵介)に通常捜査を任せて、姫川は柳井健人を単独で調べ始め捜査会議にも欠席します。そして柳井のアパートを張り込みしていて、偶然に同じように柳井を探す牧田(大沢たかお)と出会う。実は、牧田は竜崎組の幹部で、お互いに背負っている「血の匂い」に惹かれ合うのでした。

柳井の追求を止めない姫川は、上層部により事件の担当を外されてしまいます。千恵の事件で、何らかの警察内部の隠蔽があったことを感じた姫川は、ついに姫川班にも口を開き、全員で密かに捜査を続け、ついに最初の事件で牧田が関与している決定的な証拠を見つけ出すのでした。

何しろ「見えない雨」がモチーフだからでしょうか、ほぼ全編にわたり屋外では激しい雨が降りつづけている・・・んですが、「インビジフルレイン」は姫川と牧田、そして柳井の心の中のトラウマのことなのでしょうから、見える雨にこだわりすぎの感(晴れたら撮影中止だったらしい)は否めない。

姫川と牧田の関係性も、体を許すくらいになってしまう(ような風の映像)ほどになるという説得力がよくわからない。菊田はあきらかに姫川に好意を寄せている演出なんですが、だったらもっと姫川に絡んでもいいんじゃないかと感じます。

冒頭はフラシュバックで始まるのですが、別々の人物の回想が時系列と関係なく登場し、竹内結子以外は誰の何なのかわからないので、これも何かのレイプが関係してること以外は混乱を招くだけになっているように思います。

映画的に頑張っているのは、登場する豪華なゲスト陣で、竜崎組は伊吹吾郎、鶴見辰吾、石橋蓮司、警察側は三浦友和、田中哲司、柴俊夫、そして柳井は染谷将太といった面々。今作は、シリーズの中では姫川の「禁断の恋」に焦点を当てたものということで、異質な内容かもしれませんが、正直に言えば映画的な物足りなさが残りました。