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2023年6月23日金曜日

ミッドナイトイーグル (2007)

原作は高嶋哲夫。あえてジャンルを決めるなら、山岳国際クライム・サスペンスという・・・まあ何だかわからない感じですが、「クライマーズ・ハイ」の脚本も書いた成島出が監督。豪華なキャスティングで、なかなか硬派の展開を見せてくれます。

某国の工作により、アメリカ軍の核兵器を搭載したスティルス爆撃機が真冬の北アルプスに墜落。それを山岳写真を撮るためにキャンプをしていた西崎優二(大沢たかお)は、偶然に目撃し不鮮明ながらも写真におさめます。

西崎は戦場カメラマンとして、多くの写真を公開してきましたが、目の当たりにした惨状に写真では人の命は救えないと絶望し、山に逃避していたのです。そのため妻の病気も知らず、死に目にも会うことが出来ませんでした。雑誌編集をしている妻の妹、有沢慶子(竹内結子)は、そんな西崎を許せず、西崎の息子の世話をしていました。

西崎の後輩、上司を殴って地方に飛ばされた新聞記者、落合信一郎(玉木宏)は、西崎から連絡を受け、色々入って来る断片的な情報から、何かとてつもない重大事件が起こっていると考え、西崎と連れ立って吹雪で閉ざされている墜落現場に向かうのでした。

落合は、西崎が撮影した写真を啓子に送り調べるように頼みます。その結果、米軍の爆撃機であることが判明、墜落するように横田基地に潜入した工作員に接触します。彼はその際重傷を負っていて、仲間を裏切って恋人と共に逃亡するつもりでした。

自衛隊からも墜落現場に部隊が向かいますが、某国工作員の待ち伏せに遭い佐伯三等陸佐(吉田栄作)以外は全滅してしまいます。西崎と落合は佐伯を助けて、工作員の襲撃をかわしながら、何とか墜落現場に到着します。

しかし、すでに工作員の手によって、核兵器を爆発させるための特殊時限爆弾が起動していました。もしも爆発すれば、直接的な被害は半径数十キロ、放射能汚染は首都圏を含めて日本に壊滅的な被害をもたらしてしまうのです。しかも、三人の周囲には武装した大勢の工作員が取り囲んできました。

そもそも戦闘素人の二人が危険を冒して墜落機体のところに行く動機は何? というところから理解しないと、とてもありえない映画で終わってしまいます。西崎は戦争カメラマンとして真実を伝える使命に絶望し、そのため妻子を失う。もう一度、自分の生きる目的を再確認する必要がありました。

落合は、国家的隠蔽事案をスクープしようとして、圧力に屈してしまったことがずっと心の重荷になっている。この事件をとことんあきらめないことが、やはり自らの証明だと考えているのです・・・って、それだけなのかなぁ。佐伯も、西崎の写真を見て自衛官として平和を守ることの決意を新たにしたと告白します。

戦うことを止めてしまった西崎を非難した啓子も、実際に危険の中に身を投じることになり、そして無線で聞こえてくる西崎の声の中に、しだいに彼の心情を理解していくのでした。そういうところでは、脚本はぎりぎり許せるし、実際の冬山でのロケもそれなりにがんばっている。

ただ、政府の対応が何ともしまらない。そもそも総理大臣が藤竜也なんですが、最初から無精ひげ面で、いいところで関西弁というのはどういうわけなんだろう。総理との交渉は佐伯じゃなくて西崎が中心というのももやもやします。防衛省が協力したにもかかわらず、自衛隊はほとんど無力で、せっかく吹雪の中にヘリコプターを飛ばすものの、結局無理ですと帰ってしまう。

一番困ったのは、結末。サスペンスじゃなくて、完全にお涙頂戴路線に走ってしまいました。見終わって、後味の悪さが残ります。もうちょっと、何とかできないですかね。