2023年6月10日土曜日

ストロベリーナイト (2010)

誉田哲也の警察小説「姫川玲子シリーズ」が原作。映画ではなくて、フジテレビの単発のスベシャル・ドラマで、後に連続ドラマ化され、さらに映画化もされるくらいヒットしたシリーズでした。

ただし、誉田作品にはかなり過激な犯罪描写が多いらしく、それを映像化するとなるとかなり問題らしい。特に映画ならともかく、地上波のドラマとしてはそのままでは放送コードに引っかかる可能性が高い。

かといって、そこをスルーしてしまえば原作の魅力の大きなポイントが消えてしまうわけで、そういう意味ではおそらくスタッフは可能な描写の限界に挑んだのかもしれません。冒頭から、かなり凄惨な場面が登場するので、見る人を選ぶところもあります。

竹内結子が演じる主人公は、姫川玲子、30歳。警視庁捜査一課殺人犯捜査十係姫川班主任の警部補。たたき上げで、警部補までなるからには切れ者ですが、女性というだけで悔しい思いもたくさんしてきています。

姫川は高校生の時、連続レイプ事件の被害者であり、今でもそのトラウマを抱え母との確執の原因にもなっています。事件後、親身になってくれた女性刑事(国仲涼子)が、その犯人逮捕の際に殉職したことで、自分も警察官になることを決めました。姫川は、勘の良さと犯人の心情の推察する力に長けていて、地道な捜査を好む連中から嫌われることになります。

一番の魅力は姫川のチーム、彼女を敵視する警察内部の人間などの魅力がしっかり描かれていること。もちろん、登場人物の重要度によりその深さは様々ですが、単なる猟奇殺人事件の犯人捜しではないドラマの奥行きが只者ではありません。脚本は龍居由佳里。監督(演出)は、「キサラギ」の佐藤祐市。

姫川班のメンバーは、まじめすぎる菊田(西島秀俊)、班の生え抜き大塚(桐谷健太)、ベテランの石倉(宇梶剛士)らで、上司の係長の今泉(高島政宏)、所轄の井岡(生瀬勝久)、監察医務院の國岡(津川雅彦)などが姫川の理解者。管理官の橋爪(渡辺いっけい)は姫川を「お嬢ちゃん」と呼び軽視し、日下班主任の日下(遠藤憲一)も功を巡って敵対します。また五係主任の元公安の勝俣(武田鉄矢)も姫川には強く当たります。

公園の池のほとりに、ブルーシートで巻かれた惨殺死体が放置されていました。腹を切り裂かれていたことから、姫川は池に沈めた時に浮かばないための処置の推察。であれば、さらに別の遺体が池に沈んでいると考えます。

姫川の想像通り別の遺体が見つかり、さらに別の場所で似たような遺体が9体発見されるのです。殺された連中は、いずれもこの半年くらい異様にテンションが高く、定期的に死亡したと考えられました。大塚はネットの書き込みから殺人ショー「ストロベリーナイト」と呼ばれるサイトが関係していることを突き止め、その黒幕を探し出そうとして逆に射殺されてしまうのでした。

正味100分の放送枠に収めるため、多少犯人を追い詰めていく過程は強引な印象はありますが、それでも最低限の伏線はしっかりおさえてあり、問題になるような破綻はありません。

基本的に。姫川のかっこよさが魅力ですし、彼女のトラウマが影響する捜査手法などの妙味を楽しむということであれば、テレビドラマとしては出色の出来と言えそうです。本当に竹内さんかっこいい・・・・(残念)