2023年6月6日火曜日

探偵はBARにいる (2011)

東直己の推理小説、「ススキノ探偵シリーズ」を実写化した道産子ハード・ボイルドです。制作の鈴木武幸は、10数年前に映画化の構想を持ちますが、ぴったりの俳優が見つかりませんでした。しかし北海道出身の大泉洋が人気が出て、まさにこの役にぴったりということでオファーしたらしい。

監督の橋本一は、テレビを主戦場としていて、特に「相棒(テレビ朝日)」で中心的役割を担っています。そして、脚本が古沢良太。原作の味を最大限に生かすシナリオで、大泉洋のキャラと相まっておそらく原作のファンも納得の出来栄え。

札幌の歓楽街、ススキノがメインの話なので、撮影は全編北海道で撮影されました。雪の残る道を走り回る出演者は大変だったようです。

札幌ススキノで探偵稼業をしている「俺」(大泉洋)は、バー「ケラーオオハタ」を根城として、バーにかかってくる電話によって仕事の依頼を受ける。高田(松田龍平)は大学の研究員ですが、ほとんど仕事らしい仕事はせず、何かにつけ俺の仕事を手伝っています。

2年前、地上げのトラブルから店に放火され、スナック経営の近藤京子が殺されました。そして1年前、地域の振興に多大な尽力をした霧島(西田敏行)が何者かに殺されてしまいます。そして、俺のもとにコンドウキョウコと名乗る人物から電話がかかってきたのです。

何度か不思議な依頼を受けますが、そのたびに俺は暴漢に襲われたりして危険な目に合う。しだいに、今回の依頼が過去の2つの事件と関係があることがわかってきます。霧島の未亡人となった、今は高級クラブのママになっている沙織(小雪)が何か知っているらしい。

俺は「探偵は依頼人を守る」という信念から、コンドウキョウコを守るために、さらに事件の深みにはまっていくのでした。

第一印象は、かつての東映アクション映画、特に松田優作出演作のテイストがあるということ。松田優作の遺児、松田龍平が出ているのも感慨深いところです。暗い雰囲気の夜の店、ちよっとだけ色っぽいところもあり、ジャズ調のBGMがぴったりです。

冒頭から、けっこう激しいアクション・シーンがありますが・・・・大泉洋もなかなか体が動くもんですね。松田龍平もけっこうがんばっている。とは言え、松田優作張りの喧嘩は無理と言うもので、すぐ謝ったり、誤魔化そうとしたり、あるいは気絶してしまうこともあります。長年、大泉洋の出演を待ち続けたというだけあって、この役はまさに彼のために用意されたキャラで、もう他の俳優が演じることは想像できないくらいはまっている。

残念なのは、コンドウキョウコの正体ですが、どう考えても声色は・・・です。また小雪をキャスティングした時点で、この人は悪役のはずはなく、何か大きな影を背負った人だろうと思えてしまうところ。つまり、小雪はネタバレ・キャラなので、最後の結末も予想出来てしまいます。

まぁ、それはそれとして、警察とは違い相手も探偵には遠慮しませんので、それなりにスピードのあるシーンと、がらりとくだけるコメディ・パートのバランスが良く取れていて楽しい映画になっています。