東野圭吾の「マスカレード」シリーズが原作。主演は刑事役の「HERO」の木村拓哉とホテルマン役の「コンフィデンスマンJP」の長澤まさみ、監督は「HERO」の鈴木雅之というフジテレビ系列最強スタッフが終結した作品。
一見無関係に見える3つの殺人事件が、残されたメモにより連続殺人としてつながります。遺されたメモは次の事件が起こる場所の緯度と経度を示す数字が書かれていました。そして次の事件が起こるのが、ホテル・コルテシア東京と判明した警察は、捜査員を様々なホテル従業員となって潜入捜査を開始します。
フロントの担当になった新田刑事(木村拓哉)の教育係となったのは山岸(長澤まさみ)。ホテルマンはいかにお客様に素晴らしい時間を過ごしていただくかが大事で、どんなに無理難題を頼まれても「無理です」は禁句。ホテルの客は「仮面」を被っていて、ホテルマンはそれを承知で客を信じるのが仕事。一方、刑事はその「仮面」を剥がし人を疑うのが仕事。当然二人は衝突するのですが、新田はしだいにホテルマンの作法を身につけていきます。
ホテルには本当に様々な客がやって来る。タバコ臭いと部屋のアップグレードを要求する男、バスローブを盗んだように装うカップル、ストーカーを近づけないでと頼み込む女性、目が不自由なことを装う老婆、結婚式のためドレスを選びに来た新婦などなど・・・
新田は最初の事件の被害者の関係者を疑っていますが、彼には完璧なアリバイがある。以前新田と組んだ所轄の能勢(小日向文世)は、自由に動けない新田の代わりに着々と足で捜査を続け協力します。そして、アリバイを崩し最初の事件の犯人を特定しますが、逆に3つの事件がそれぞれ独立している疑いが生じ、事件は混迷を深めていくのでした。
客として登場するのは、前田敦子、濱田岳、笹野高史、高嶋政宏、菜々緒、宇梶剛士、橋本マナミ、生瀬勝彦、松たか子・・・・などなど、誰がどこに出てくるかを見るだけでも楽しめます。警察関係者は渡部篤郎、篠井英介、ホテル関係者は石橋凌などなどです。
古きハリウッドにならってグランドホテル形式と呼ばれるこの手の形式は、それぞれの登場人物をいかに手短に描けるかが重要。そのあたりのまとめかたはうまい。それぞれに短いドラマがしっかり読み取れます。そのために、むしろ最初の3つの事件については、省けるだけ省いて、特に最初の犯人などは映像として登場すらしない。
推理劇としては、ああ確かに手掛かりはあちこちにばらまいていたなとわかるんですが、横道を深堀するため、展開がわかりにくくなってしまったのを良しとするかどうかは評価が分かれるところかもしれません。
単なる刑事ドラマではなく、相反する心情を持つ二人がギリギリの接点で協力するという発想はオリジナリティがあって興味深い。そこのやり取りを見せるための土台として事件があると思えば、こういう作りもありだと考えます。