東京でトレーダーをしている長嶺亨(松山ケンイチ)は、立山で山小屋を営む父、勇夫(小林薫)が遭難者を助けて身代わりに亡くなったと麓で民宿をしている母、菫(檀ふみ)から連絡を受けます。久しぶりに実家に戻った亨は、まだ雪深い山小屋、菫小屋に母、去年から小屋と民宿を手伝う高澤愛(蒼井優)らと登ります。
亨は小屋を引き継ぐ決心をし、東京を引き払うのです。大量の必要物資を歩荷で小屋に向かう亨は、同じように荷物を背負う多田悟郎(豊川悦司)に追いつかれ、一歩一歩自分の脚で普通に登ればいいと、かつて勇夫が言った言葉と同じことを言われるのです。勇夫の大学時代の山岳部の後輩である悟郎は、勇夫が夢枕に出て、亨が一人前になるまで頼むといわれたから、しばらくいるんで気にするなと言う。
夏山の登山シーズンとなり、小屋を開くと大勢の登山客がやって来て、亨は朝早くから夜遅くまで慣れない仕事をこなしていきます。遭難しそうになる人を助けたかと思うと、通称「大飯くん」も悪天候の中出発し滑落してしまうのです。出発を止められなかった亨は落ち込みます。
ふだんは明るく振る舞う愛でしたが、家族を失い心の隙間を埋めるため立山に来て動けなくなったところを勇夫に助けられたと話す。悟郎は、愛は背負ってきた重たい荷物の一つをおろそうとしている、そして菫小屋からたくさんの酸素を貰ったと言うのです。
いよいよ冬が近づき、小屋を閉める日。悟郎が脳梗塞を起こし、救助隊を待っているのでは助からないと考えた亨は、悟郎を背負って下山することを決意します。病院で悟郎は、亨がまだ半人前だから勇夫から帰されたと話します。
翌年、春が来て、再び小屋を開く準備に忙しくしている亨、愛、菫のもとに悟郎が帰ってきました。やっぱり、人との触れ合いが大事だしここが一番落ち着く場所だと話すのです。亨と愛も自分の居場所がはっきりとわかりました。
木村大作は名カメラマンで、監督兼撮影を担当し、いつもながら本当に見事なヴィジュアルを堪能させてもらえます。ただ、木村作品は、美しい景色に主役を持っていかれてしまう傾向が否定できないところ。しかし、この作品は、それぞれの登場人物の人間像が台詞として語られ過ぎず、映像の中で少しずつ積み上げられていく感じが映画的で心地よい。
物凄く大きなことを言わんとしているわけではなく、ほのぼのとしたエピソードの積み重ねではありますが、東京の生活を無味乾燥の物として描くわけではなく、大自然の中でより大きな価値を見つけることで主人公の成長を見守っている感じがします。
また、出てくる人物が一人も悪い人がいないというのも気持ちよい。山に関わる人々には、皆で助け合うという暗黙の不文律が自然と芽生えて、それが家族として固まっていくということ。そして、父から受け継ぐもの、父を越えていくものとは何だろうと考えさせられました。木村大作監督3作品に中では、文句なしに一番の傑作として推したいと思います。
亨は小屋を引き継ぐ決心をし、東京を引き払うのです。大量の必要物資を歩荷で小屋に向かう亨は、同じように荷物を背負う多田悟郎(豊川悦司)に追いつかれ、一歩一歩自分の脚で普通に登ればいいと、かつて勇夫が言った言葉と同じことを言われるのです。勇夫の大学時代の山岳部の後輩である悟郎は、勇夫が夢枕に出て、亨が一人前になるまで頼むといわれたから、しばらくいるんで気にするなと言う。
夏山の登山シーズンとなり、小屋を開くと大勢の登山客がやって来て、亨は朝早くから夜遅くまで慣れない仕事をこなしていきます。遭難しそうになる人を助けたかと思うと、通称「大飯くん」も悪天候の中出発し滑落してしまうのです。出発を止められなかった亨は落ち込みます。
ふだんは明るく振る舞う愛でしたが、家族を失い心の隙間を埋めるため立山に来て動けなくなったところを勇夫に助けられたと話す。悟郎は、愛は背負ってきた重たい荷物の一つをおろそうとしている、そして菫小屋からたくさんの酸素を貰ったと言うのです。
いよいよ冬が近づき、小屋を閉める日。悟郎が脳梗塞を起こし、救助隊を待っているのでは助からないと考えた亨は、悟郎を背負って下山することを決意します。病院で悟郎は、亨がまだ半人前だから勇夫から帰されたと話します。
翌年、春が来て、再び小屋を開く準備に忙しくしている亨、愛、菫のもとに悟郎が帰ってきました。やっぱり、人との触れ合いが大事だしここが一番落ち着く場所だと話すのです。亨と愛も自分の居場所がはっきりとわかりました。
木村大作は名カメラマンで、監督兼撮影を担当し、いつもながら本当に見事なヴィジュアルを堪能させてもらえます。ただ、木村作品は、美しい景色に主役を持っていかれてしまう傾向が否定できないところ。しかし、この作品は、それぞれの登場人物の人間像が台詞として語られ過ぎず、映像の中で少しずつ積み上げられていく感じが映画的で心地よい。
物凄く大きなことを言わんとしているわけではなく、ほのぼのとしたエピソードの積み重ねではありますが、東京の生活を無味乾燥の物として描くわけではなく、大自然の中でより大きな価値を見つけることで主人公の成長を見守っている感じがします。
また、出てくる人物が一人も悪い人がいないというのも気持ちよい。山に関わる人々には、皆で助け合うという暗黙の不文律が自然と芽生えて、それが家族として固まっていくということ。そして、父から受け継ぐもの、父を越えていくものとは何だろうと考えさせられました。木村大作監督3作品に中では、文句なしに一番の傑作として推したいと思います。