2023年8月21日月曜日

チア☆ダン (2017)

チアダンスはチアリーディングを芸術性の高いスポーツに特化し、笑顔重視でエンターテイメント性を追求するもの。そういう意味では、この映画は青春スポーツ根性コメディなんですが、何しろ実話をもとにしているというのがポイント。

2006年に創部された福井県立福井商業高等学校のチアリーダー部は、2009年に本場アメリカで行われた選手権に出場し何と優勝したというのが事実。しかも、その後2016年までに6回の優秀を誇ると言うから凄すぎる話。タイトルは正式には「チア☆ダン〜女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話〜」という長い物になっています。

監督は河合勇人、脚本は林民夫。主演の広瀬すずにとっては、「ちはやふる」に続く似たテイストの映画で、ある意味青春弾ける感じは最も得意ジャンルなのかもしれません。基本的に最終的には優勝してしまうことがわかっていることなので、その分どうなるかというハラハラドキドキ感は低くなってしまいます。その代わり、一番の見所は若手の女優陣が数か月の特訓でどこまで優勝レベルのチアダンスを習得するかというところ。

高校に入学した友永ひかり(広瀬すず)は、中学の友人、サッカー少年の山下孝介(真剣佑)を応援したいという理由でチアダンス部に入部します。ところが、顧問の早乙女薫子先生(天海祐希)は、超スパルタで口癖が「地獄におちるわよ」となると、どんどん部員は脱落し、入部したてなのに部員は1年生だけという事態。

経験者の玉置彩乃(中条あやみ)が部長になり、ストリートダンスの得意な紀藤唯(山崎紘奈)、クラシックバレエ経験者の村上麗華(柳ゆり菜)以外は、まったく素人同然の集まり。家庭環境が複雑でポッチャリの東多恵子(富田望生)、オタク系でノー天気な永井あゆみ(福原遥)、そしてひかりらは毎日悲鳴をあげるしかない。

しかし、彩乃のリーダーシップで何とか持ちこたえ、翌年初めての県の競技会に出場します。当然最低の結果で、気位の高い麗華は下手糞に足を引っ張られるのは御免だと部を去ってしまいます。しかし、ひかりはこうなったらあきらめたくないと、一度バラバラになった部員を一人一人説得して回る。2年生になって部員が増え、有望な後輩も入ってきましたが、翌年の大会も成果が出せません。

学校では廃部も検討され始めますが、早乙女先生の熱心さにひかりらも校長室に押し掛け、ついにアメリカでの優勝宣言をしてしまいます。そして、高校生最後の全国大会を勝ち抜き、ついにアメリカに渡ることができました。

予選では緊張もあって実力が発揮できないチームに対して、早乙女先生はずっとセンターで踊っていた彩乃をはずし、ひかりとセンターを入れ替えることを決めます。彩乃のショックは大きく、ひかりも先生を軽蔑すると怒ります。

しかし、早乙女先生がどれだけの想いであえて厳しく自分たちに接しているのかを知り、自分たちが何を目標にしているのか、どこで踊ろうと全員が一丸となれば同じことだと気がつき、本選では最高のパフォーマンスを見せて審査員・観客の度肝を抜くのでした。

というわけで、難しいことはいりません。無条件に女子高校生の青春パワー爆発を楽しめば良い映画です。素人目に見てもチアダンスもなかなかのものを披露していて、優勝レベルかどうかはともかく、相当練習を積んだのだろうと納得の演技です。

部員中心の話が進み、個性強烈なはずの早乙女先生の活躍があまり無いのがちょっと寂しいところですが、2時間の映画で3年間の成長を描くのでいたしかたがないところ。また福井弁(らしい)の方言全開の台詞回しも楽しいポイントです。映画が好評だったため、後にテレビ・ドラマ版も制作されました。