2023年8月23日水曜日

秘密 THE TOP SECRET (2016)

清水玲子によるマンガが原作で、近未来の科学捜査をテーマにした作品。映画は「るろうに剣心」実写化の大友啓史が監督。原作では舞台は2060年ですが、映画の時間軸はほぼ現代。科学警察研究所法医第9研究室(通称、第9)が存在し、MRI捜査が行われていました。

MRI(Momory Reproducting Imagingsystem)は、死後10時間以内であれば脳内に残る記憶の電気信号を映像化して取り出すことができる技術のこと。殺人事件の被害者が最後に見た映像を再構築することで、犯人が判明することを目的とします。

まず、基本的にこのシステムの存在を肯定しないと話が進まないわけです。少なくとも現代医学では荒唐無稽。可能だとしても、どのように解析できるのかは作者の想像でしかありません。映画では実際に俳優がヘルメット型カメラを装着して、超主観的映像を「らしく」見せてくれます。

MRIは遺体の脳を露出し、多くの電極のついたヘルメットを被せ取り出した記憶信号を室員が別室で疑似体験するような仕組み。検者の受ける精神的重圧が強く、過去に記憶情報を見た鈴木克洋(松坂桃李)は発狂して自殺しています。

第9の若き室長、薪剛(生田斗真)は、プロファイラーとしての能力が高い青木一行(岡田将生)を新しいメンバーに加えます。そして、青木に一家惨殺事件の犯人として死刑が執行されたばかりの露口浩一(椎名桔平)のMRIを命じます。犯罪事実の確認と一家で一人だけ行方不明になっている長女の絹子(織田梨沙)の行方の手がかりを探すはずが、何と取り出した記憶から、犯人は絹子であり、浩一は娘の身代わりであったがわかります。

父親に気がつかれているのを知ったうえで、絹子は家に何人もの男を引き込むサイコパスと考えられ、今も生存して新たな犯罪に手を染める可能性が高いと考えられましたが、主観的な脳内映像は証拠にできず、またそれを認めると誤認逮捕が発覚することから上層部は公にすることは拒否します。

その直後、3年間行方不明だった絹子が姿を現します。記憶喪失で何も覚えていないという絹子は、薪や青木から真犯人と指摘されても、まったく平然としているのでした。第9から表立って動きがとれないため、昔ながらの剛腕刑事である眞鍋(大森南朋)に、絹子が関係した男たちの所在を調べるように依頼します。

彼らの一人が自殺し、MRIを行うと28人連続殺人事件の犯人、貝沼清孝(吉川晃司)による洗脳が自殺の原因と判明します。そして、絹子も貝沼と関係がありそうだと考えた薪は、ついに自殺した鈴木の凍結保存された遺体から脳内映像を見る決断をするのでした。

実は、逮捕され拘置所内で自殺した貝沼の脳内映像を見た鈴木は、貝沼の脳を銃で吹き飛ばし、薪に自分の脳を打ち抜くよう迫り、もみ合っているうちに薪が射殺してしまったのでした。それは貝沼の情報の中に薪には見せられない何かがあるということ、そしてそれが一連の事件に関係していると考えられたのです。

正直、ちょっとよくわからない映画でした。原作のマンガ(かなり長くて複雑らしい)をしっかり読み込んでないと、どうしてこのような展開になるのかがよくわからないのかもしれません。かなり重要そうな貝沼の事件だけでも謎が多いのに、絹子絡みでストーリーが進むので消化不良になってしまいます。

リリー・フランキーが精神科医としてちょっちだけ登場しますが、これも薪らの診療をしているようなのですが、やたらとエキセントリックで暴力的な描写で演出の意図がまったく伝わらない。映画のオリジナルシャラである眞鍋刑事も、どう見ても昭和の警察官だし、捜査へののめり込み方も違和感を感じます。

記憶による脳内映像という、ある意味究極の「個人情報」が見れるということは、倫理的な問題と共に、検査をする側に過大な精神的負担をかけることは話の前提として認めることはできるのですが、そこまで科学捜査が進歩しても結局は物的証拠の中でしか事件が解決しないというのは残念なところ。大友サンの映画なので期待し過ぎたのがいけないのかもしれません。