2023年8月25日金曜日

白ゆき姫殺人事件 (2014)

原作は「告白」で有名な湊かなえで、2011年に発表され、インターネットの拡大、特にSNS利用者の急増による情報拡散の怖さに早くから警笛を鳴らした作品。映画は、中村義洋監督、林民夫脚本の「ゴールデンスランバー(2010)」のコンビが担当しました。


長野県しぐれ谷で、めった刺しの上に焼かれた死体が見つかります。テレビのディレクターをしている赤星雄治(綾野剛)は、自分の行動やちょっと耳にしたことを四六時中ツイートするような生活。

化粧品会社で働く知人の狩野里沙子(蓮佛美沙)から電話があり、事件のことで警察に聞かれたことを赤星に話す。里沙子が、殺されたのは自分の指導を担当する先輩の三木典子(菜々緒)であること、典子は美人で仕事ができることなどを話すと、赤星は逐一ツイートにあげてしまう。

スクープになると考えた赤星は直接里沙子を取材すると、里沙子は典子の同期入社で地味な城野美姫(井上真央)が、仕事で差を付けられた上に彼氏を取られたせいで殺したのではないかと言い出すのです。事件の前日、先輩の送別会の帰り典子が城野の車に乗るところ、その後駅に走っていく城野が目撃されていました。城野は以来会社を休んでいて行方不明なのです。

里沙子の情報は、ほとんどが城野が指導担当をしている同期の満島栄美(小野恵令奈)からのまた聞き。そこで、赤星は次に満島を取材する。城野はふだんは物静かだが、急に過激な行動に走ることがあること、事件前日に典子の大事なペンが無くなった時にほくそえんでいたことを話し、城野が典子を車に乗せる口実を作るためにペンを盗んだと想像するのです。

赤星は次に篠山聡志係長(金子ノブアキ)を取材する。赤星が二人の交際について尋ねると、篠山は一方的に弁当を作って来ただけで薄気味悪かった、典子とは付き合っていたが別の彼氏ができて別れたと話します。

赤星が実名は伏せて取材状況をつぶやく。興味津々というのだけでなく、警察に通報しろよといったリツイートに混ざって典子が好きだった芹沢ブラザースというバンドの雅也が誰かに突き落とされ、音楽家として大事な手のケガをしたという情報も入り込んでくるのです。赤星は事件の現場に向かい、事件の核心に迫ったのは俺だけだとつぶやくのです。

赤星の取材をもとに再現VTRまで作り、ワイドショーで放送すると視聴率は上々。SNSでは、匿名であったにもかかわらず、瞬く間に城野美姫という実名が特定され、ツイートで情報を晒す赤星に対する非難も始まりました。城野の大学時代の親友、前谷みのり(谷村美月)はテレビ局へ講義する。


赤星は城野の故郷に取材する。同級生たちや近所の人々は、城野が放火騒ぎを起こしたかもしれないとか、呪いの力があるようだなどと話すのです。小学生の時いじめられていた夕子(貫地谷しほり)は、城野だけが自分のともだちだったと話しますが、昔の記憶は自分が都合が良い事しか話さないものだと赤星に釘を刺します。

ワイドショー第2弾。番組では匿名のままであったが、犯人は魔女のような女性という印象付けるような編集でした。その頃、ビジネスホテルに隠れていた城野美姫本人は、どんどん膨らんでいく自分の「情報」を呆然と眺めていました。そして、本当の自分をノートに書き留めるのです。

テレビやSNSで言われていることは、全部自分に都合が良いように作り替えられた話であって、三木典子は陰で自分への嫌がらせをしていたこと、付き合いだしたばかりの篠山を横取りしたことを書き留める。芹沢ブラザースの音楽だけが心のよりどころでしたが、それを知った典子は伝手を使い芹沢プラザースの雅也に近づいて、篠山を簡単に捨ててしまうのです。

典子は事件前日、芹沢ブラザースのコンサートのチケットを城野にあげるというのですが、翌日になるとやっぱりやめたという。典子に厳しくされていた狩野里沙子は、それを知ってうまくチケットを横取りする方法を城野に教えるのです。城野は寝てしまった典子からチケットを盗み、急いで駅に行ったのでした。事件が起こったのはその後だったのです。

まさに、インターネット上の情報の信憑性の問題。無責任なつぶやき・・・はっきり言って、ほぼすべてがそうだと言っても過言ではありません。他人の事を何の根拠もなく糾弾するが、自分がその責任を取ることは無いという現代社会の構図が描かれています。

まさに自分を含む現代人が、いつでも自分が起こすかもしれない、自分が巻き込まれるかもしれない展開です。登場人物の誰かは、まさに自分の鏡のような存在なのかもしれません。