2023年8月10日木曜日

黄金を抱いて翔べ (2012)

高村薫原作のクライム・サスペンス。高村の小説家デヴュー作です。監督は「パッチギ」の井筒和幸。

大坂の銀行本店の地下に保管されている240億円分の金塊を盗み出そうと集まった6人の男。リーダーは既婚者でこどももいる北川浩二(浅野忠信)、過激派の調達係をしていた幸田弘之(妻夫木聡)、システム・エンジニアの野田(桐谷健太)、某国のテロリストのモモ(チャンミン)、北川の弟で死にたがりの北川春樹(溝端淳平)、エレベータ技師のジイちゃん(西田敏行)がメンバー。

少しずつ準備を始めた6人でしたが、モモを利用したい左翼や公安、某国の諜報員などが周辺で暗躍し始めます。ジイちゃんが公安にモモの情報を流したのです。街のゴロツキ(青木崇高)たちは、店を荒らした春樹を拉致して脅迫してくる。

春樹を取り返したものの、北側の妻と子がひき殺されました。春樹はバイクでゴロツキの車に激突し相手を死なせたものの、自分も瀕死の重体になります。いよいよ明日決行というとき、モモのアパートに公安の二重スパイが突入し、モモと幸田は銃撃され負傷してしまいます。

幸田とモモは、近くの教会に隠れます。その教会は、父親が神父をしていてこどものとき幸田が放火した場所です。朝になるとモモは息を引き取っていました。幸田はモルヒネで痛みをこらえながら、北川、野田、ジイちゃんと合流します。

野田による近くの変電所の爆破から始まり、エレベータ故障を装ってビルに侵入した北川、幸田、ジイちゃん。ジイちゃんがエレベータ室に行き制御し、北側が警備員を倒し、幸田が要所を爆破しついに彼らは金庫にたどり着くのでした。

全体に暗く濁った雰囲気の中で、強盗のリアルを描いている作品。そのわりには、計画は緻密なようでずさん。ほころびは内側と外側の両方から始まる。実行までのトラブルの多さを考えると、そのまま決行するというのは、あまり無茶という感想。

結局、誰も幸せにはならないという・・・まぁ、犯罪ですから当然なんですが、何とも見終わっても暗澹たる気持ちにさせられます。傑作なのか、凡作なのか、はたまた駄作なのか・・・なんともわからない映画。

それなりにスリルはあるんですが、6人のキャラクターの描き方が何か中途半端。というか、描いているようで描けていないというジレンマがあり、結局誰にも感情移入はできないというのが問題なのかなと思ってしまいます。とりあえず、6人の名演で成り立っていることは間違いありません。