2024年3月12日火曜日

PHEVへの道 51 自動運転


自動車の自動運転というのは、今の時代、各メーカーが先を競って開発している先進技術の一つです。究極的には、運転手無しで人や物を運ぶためのモビリティというのがSF的な到達点ですが、メーカーだけが先走っても絶対に無理と言わざるを得ない。それが例えテスラであったとしても、根本的に道路そのものから組み直さない限りは不可能だと思います。

例えば京都や奈良のように碁盤の目のような道路が交差している限られた場所では、すべての交差点にトラフィック・コントロールのためのセンサーなどを設置すれば、実現は近いかもしれませんが、日本に限らず世界中の道路を組み直すことはできません。むしろ空飛ぶ自動車の方が、まだ現実的かもしれません。

2012年に初めて自動運転のごくごく第一歩と言えるクルーズ・コントロールというものを使いました。これは、運転中に車のスピードを一定に保つだけのもの。高額なオプションでは、ミリ波レーダーによるプリクラッシュ・セーフティという衝突回避システムも登場していました。

スイッチをONにした時の速度を維持し、1km/hずつプラスマイナスの調節が可能です。周りの車との関係性はまったくありませんので、近づきすぎれは自分でブレーキを踏むしかない。車間距離が広がりすぎれば、場合によってはアクセルを踏むことになります。それでも、高速走行などでアクセルから足を離せるというのは、右足の疲れの軽減効果は絶大でした。

2016年頃だったか、走行中の車線をキープしようとするレーン・アシスト機能がつきました。車線をしっかり感知できないと機能しないのですが、これがあるとステアリングがはみ出さないように固くなる感じ。

2019年に車が変わって、本当に驚いた。何と手放し運転が可能になっていました。レーン・アシストとクルーズ・コントロールが合体したみたいな機能なんですが、高速道路の緩いカーブであれば、十分に時速80km/hくらいでの手放し運転ができました。プリクラッシュ・セーフティがデフォルトで装備されるようになったとは言っても、やはりずっと手放しを続けるのは怖いし、実際にステアリングに手は乗せたままでした。

衝突回避についても、スバルのアイサイトはかなり進んでいると評判になることが多いのですが、トヨタの場合もこの時点でほぼ信頼できるシステムとなっています。実は、今までに数回メーターに真っ赤に「ブレーキ!!」と表示させたことがあります。よそ見をしていたとかではないのですが、少しブレーキを踏むのが遅めだった時、確かにシステムが機能しているのを実感しました。

さて、60系プリウス以後、トヨタが搭載している自動運転は、実はある意味進化した部分と退化した部分があります。退化したのは、安全面を重視したことによって、高速走行では手放しを許さなくなったところ。

ステアリングに静電感知センサーが付いていて、手を載せているかどうかをしっかり感知して、手を離すと「ステアリングを保持しろ」と警告してきます。さらにドライバーの顔を検知して、視点の認識してよそ見が長いと警告を発するようになっています。トヨタは自動運転の限界を理解していて、現状で安全を確保できる範囲だけをユーザーに提供する考えなんだろうと思います。

進化したのは、逆に安全性が確保しやすい40km/h以下の速度では、ほぼ手放し・足放し運転を可能にしています。現実には高速道路などでの渋滞時などで活躍することが想定できますが、ドライバーの眠そうな顔もしっかり検知するところが頼もしい。

自動運転技術は、IT大手企業にとっても実力の見せ所ですから、iPhoneなどで勢いがある米国アップル社も10年以上前から参入し、その実現を非公式に模索していました。先頃、大いに話題となったのは、「アップルカー断念」のニュースでした。

アップルはアップルカーのために年間10億ドルを投入してきたと言われており、これまで数兆円を費やし、テスラの買収すら考えていたらしい。にもかかわらず、研究開発に関わってきたスタッフを大量に解雇したことは事実として報じられています。

自動車の自動運転の実現は困難であると、巨人アップルが自覚したことは象徴的です。電気自動車の今までの自動車には無い魅力の一つとされてきた片方の羽を失うことは、自動車業界の未来を考える上で重要です。日本でもホンダとSONYの共同プロジェクトが始動しており、コンセプトカーも発表されていますが、今後の動向には注目したいと思います。