2024年10月29日火曜日

劇場版 MOZU (2015)

TBSとWOWWOWが共同製作した「MOZU」シリーズの完結編は、映画として劇場公開されました。監督はシリーズを通して羽住英一郎、脚本は仁志光佑。シリーズの印象的な音楽を担当したのは、多くのドラマなどで活躍している菅野祐悟です。

Season1、Season2を通して、家族の事となるとまったく見境なく突き進む倉木警部(西島秀俊)は、妻の千尋が関わったグラークα作戦の中身と妻の死の真相にたどり着き、抜け殻のような酒浸りの生活を送っていました。大杉警部補(香川照之)は、すべてが隠蔽されてしまう警察組織に嫌気がさして退職し、今では個人探偵事務所を構えています。明星巡査部長(真木よう子)も、外事の仕事をしつつもどこかに割り切れない思いを残していました。

ここまでで、大きな事件の影に必ず登場するといわれ、多くの人の悪夢の根源となっている「だるま」の正体、そして倉木の娘の死の真相については判明していませんでした。そんな中、高層ビルのオフィースにテロリスト集団が侵入し、多くの人質を盾に立てこもります。彼らは周辺地域にも爆弾を仕掛けたと通告し、街は非難する人々で大混乱になります。

ペナム大使館も大統領夫人が娘のエレナを連れて大使館から避難するのですが、その車列が襲われます。たまたま通りかかった倉木により、夫人とエレナの拉致は失敗し、大杉がエレナを自分の事務所に匿うのでした。テロリストたちの目的はエレナの誘拐であり、作戦が失敗するとビルから見事に行方をくらますのでした。

犯行グループのリーダーは殺人鬼の権藤(松坂桃李)で、彼は新谷浩美を崇拝しアイスピックを持ち歩くような男でした。権藤を手先として利用しているのは高柳(伊勢谷友介)で、彼は「だるま」を崇拝する忠実な部下でした。権藤は大杉の事務所を襲いますが、たまたま居合わせた大杉の娘、めぐみ(杉咲花)を誘拐し、さらに高柳は明星も拉致し、明星たちを助けたかったら、エレナを連れてペナムに来て我々の駒の一つになるように倉木を脅迫してきます。

大杉はエレナを連れ権藤らの元へ、そして倉木は「だるま」と接触することになるのですが、浩美を真似た殺人を犯す権藤を許せない新谷和彦(池松壮亮)、倉木に興味を持ち絡んでくる東(長谷川博己)らも登場し、事態はさらに混迷を深めていくのでした。

すでに衆知のことなので、「だるま」の正体を明かすと、彼は戦後の日本の陰で暗躍し続ける最大のフィクサーであり、本名は吉田駒夫です。しかし、さすがに高齢でしたが、次々に体の弱った場所を取り変えるための部品をキープするために人身売買を行っていました。実はエレナも部品の一つであり、生存のために絶対必要なパーツだったのです。演じたのはビートたけしでした。

倉木の妻や娘の夢にだるまが出ていたことや、娘の死の真相も明かされますが、正直、ちょっと納得しきれない部分はあります。また、結末もなんかもやもやした終わり方。吉田駒夫もラスボスとしては出番が弱いし、続編を作りたいのかもしれませんが、肝腎な部分を明示的にも暗示的にも隠し過ぎで、やや見る側には不親切な感じは否めない。

ただ、ここまで壮大なテーマの映像化されたストーリーはこれまで比類する物はなく、タイトルの「モズ」も、最初は新谷兄弟のことだと思っていましたが、衝動により突き進む倉木も「モズ」の一人だったことがやっと理解できました。名作とまで持ち上げませんが、順にすべてを見ていくと、日本のエンターテインメント作品としてはよく出来た作品と言えそうです。