2024年10月14日月曜日

邪神の天秤 公安分析班 (2022)

木村文乃演じる如月塔子が活躍した、麻見和史原作の「殺人分析班シリーズ」のスピンオフ作品です。監督は引き続き内片輝が担当しており、同じ世界観を踏襲しています。殺人分析班では、神谷刑事部長(段田安則)、早瀬係長(渡辺いっけい)、石倉(藤本隆宏)、尾留川(小柳友)などが少し登場しますが、残念ながら如月は名前だけ触れられるだけです。

今回の主役は捜査第一課十一係の主任だった鷹野秀昭(青木崇高)で、「蝶の力学」事件中に公安部への移動が決まっていました。この移動は、過去に後輩が刺殺された事件の真相を調べるために、鷹野自ら希望でした。

公安第五課の佐久間班に配属された鷹野は、仕事を覚えるために氷室沙也香(松雪泰子)と組むことになります。冷徹な班長は佐久間(筒井道隆)で、仲間には能見(徳重聡)、国枝(小市慢太郎)、溝口(福山翔大)らが仲間ですが、チームとして捜査する捜査一課と違い、違法行為も厭わず個別の動きが多い公安の手法は、鷹野にとってなかなか馴染めるものではありませんでした。

赤坂で爆弾事件が発生し、退避しようとした現職国会議員が惨殺されたのです。遺体は胸から腹まで切り開かれ、内臓がすべて持ち去られていました。しかし、心臓だけは近くに置かれた天秤に乗せられ、一方の白い羽とつり合いが取れていたのです。さらに、遺体のそばには小さな石板が置かれ、表には古代エジプトの象形文字であるヒエログリフ、裏には不思議な動物の絵が描かれていました。

使われた爆弾が以前過激派が用いていたものとそっくりだったことと、被害者が国会議員であることから、この事件は公安案件とされ佐久間班が担当することになりました。エジプト学者の説明によると、これは古代エジプトの「死者の書」を模したものでした。死者が冥界に向かう途中で、心臓と羽が釣り合えば正しい者として来世での復活が許され、釣り合わない場合は心臓を犬のようなアメミットに食べられてしまうため魂を失い転生が叶わなくなると言うものでした。

事件には犯罪にも手を染めることで公安からマークされている新興宗教の世界新生教の関与が疑われ、氷室の協力者の情報により、続けて起こそうとしていた爆弾テロも含めて教祖らを逮捕することができました。しかし、続いて、今度は大学教授が同じような殺され方をします。こちらは大学内に存在する過激派グループの関与が疑われ、謎は深まっていくのでした。

公安が舞台ですから、国家の利益のためには個人の命は二の次という「(ドラマ的な)公安らしさ」は十分に描かれ、実際、最後に鷹野の後輩の事件についても公安の関与が明るみになります。ただ、主役は捜査一課のエースだった鷹野ですから、公安として役目を果たす一方で、一刑事として事件に臨もうとする部分がクローズアップされています。

鷹野と因縁のある、収監中の相羽町子(菊地凛子)に、法医学者としての意見を聞きに行ったり、殺人分析班ではお馴染みの「すじ読み(既知の情報を整理して事件を読み解くこと)」を公安内で行ったり、班長の命令を無視して危険な状況にある協力者の救出を行ったりと、ある意味鷹野らしさが全開なのはドラマとしては面白い。

ただし、WOWWOWドラマとしては、60分×10話というのは長すぎる。その分謎が多すぎて、ストーリーが複雑になりすぎた感は否定できません。また演出も冗漫なところが多々あるのは残念なところ。やはり6話程度でもう少し整理された方が、緊張感が持続できたように思います。