2024年10月20日日曜日

陽はまた昇る (2011)

テレビ朝日の連続ドラマで、脚本は井上由美子。井上由美子は90年代から多くのテレビ・ドラマを手掛けており、そのジャンルは多岐にわたります。同じ脚本業をする人からも評価が高く、記憶に残るタイトルが目白押しです。

「陽はまた昇る」と云えば、1957年のアメリカ映画のタイトルを真っ先に思い出すのは昭和人。ここでは警察の紋章である旭日章になぞらえ、登場人物たちが立派な警察官になっていくことを意味しています。

スペシャル・ドラマとして放送された「最後の晩餐 刑事・遠野一行と七人の容疑者」から続くストーリー。遠野一行刑事(佐藤浩市)は、妻の奈津美(斉藤由貴)が犯罪者、安藤(井浦新)と行動を共にしていることの責任を取り、刑事を辞して教官として警察学校に赴任してきました。

校長の内堀(橋爪功)は、辞職するつもりだった遠野を警察学校教官に移動することを強く働きかけたのですが、その理由ははっきりとは口にしません。訓練生に厳しく接する遠野のやり方には、男勝りの部長の簑島佐和子(真矢みき)も反発しますが、内堀は全く意に介しませんでした。

遠野教場の訓練生には、物事に真面目に接しますが、仲間と馴染もうとしない湯原(池松壮亮)、そこそこできますが今風のチャラ男の宮田(三浦春馬)、リーダーとなった妻子持ちの松岡(高橋努)、警察オタクでちょっと少女っぽい瀬尾(冨浦智嗣)などがいて、彼らもまた遠野とぶつかりながら次第に警察官として成長していくのでした。

そんな中で、遠野は安藤と二人きりで会う機会を得て、自首するように説得します。しかし、自分から奈津美を奪った遠野に対しての恨み、また警察そのものを信じようとしない気持ちは根深いものでした。

その直後、離れて待っていた奈津美が偶然に警邏中の警官に職務質問されたため、安藤は警官を殴り倒してますが、警官の威嚇射撃が奈津美に命中してしまうのでした。逆上した安藤は、ついに警察学校に侵入して遠野教場の訓練生を人質に立てこもり、遠野が来ることを要求するのでした。

警察学校の厳しい教官と訓練生の成長という流れは、すぐに木村拓哉主演で好評を博した「教場」シリーズを思い出します。こちらは長岡弘樹原作を「踊る大捜査線」シリーズの君塚良一が脚本を担当したもの。長岡の原作は2013年ですので、似たような展開ですが「陽はまた昇る」の方が先と言えそうです。

スペシャル・ドラマを先に見ておくことで、遠野の人間性と苦悩が頭に入りやすい。ちなみに「教場」は先にスペシャルで訓練生の成長を描き、後から連続ドラマで教官の人間性などが描かれるという逆の展開でした。

訓練生の中では、準主役の湯原と宮田を軸に話が進みますが、いかにも池松壮亮らしい役柄の湯原に対して、三浦春馬のチャラ男は実に珍しい役柄です。さすがに子役からすでに多くの役柄を演じてきただけあって、どんな役でも実に自然に演じられるところはさすがの役者だと再認識しました。