2024年10月15日火曜日

最後の晩餐 刑事・遠野一行と七人の容疑者 (2010)

テレビ朝日のスペシャル・ドラマ。まぁ、普通の刑事ドラマ・・・と言ってはつまらないのですが、実は今のテレビ・映画界で注目すべき脚本家の一人、井上由美子が担当しているというだけで、単なる2時間ドラマといって切り捨てられない作品です。

芝浦の開店初日のイタリアン・レストラン「ダ・ヴィンチ」に集まった人々は、やっと夢を叶えたオーナー・シェフは八木沢鷹彦(成宮寛貴)、、そして9人の客でした。店の壁にはレオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」のレプリカがかかっていました。そしてディナーが始まって間もなく、何者かによって入口付近にガソリンが巻かれ放火されてしまったのです。

3人が死亡し、看護師の島村ひとみ(安達祐実)、引きこもりの大学生立松俊太(本郷奏多)、テレビ局の敏腕プロデューサーの河合弘(石黒賢)の三人は、軽傷で病院に搬送されましたが黙って帰宅してしまいます。警視庁捜査一課の遠野一行(佐藤浩市)は新米の高村(柄本祐)を相棒に捜査を始めます。

遠野は八木沢から当日の予約客の氏名を聞き、黙って現場から立ち去った国会議員の横手(中尾彬)、激安量販店経営の富永麗子(黒木瞳)、そして廃品業者の三条(西田敏行)らに話を聞きに行きます。三条は7年前にリストラされた苦悩から妻を殺害し遠野に逮捕され、現在仮出獄中でした。

生存する6人の客のすべてが、何故店にいったのか口をつぐんでしまいます。そして八木沢を調べていくと、2年前に婚約者を通り魔に殺害されていた事実が判明します。その犯人は逮捕されましたが、取り調べ中に自殺していたのでした。

退院した八木沢は、6人に焼けただれた店に再び招待するのです。彼らは、もう一度「最後の晩餐」のために集まるのでした。八木沢を監視していた高村の連絡を受けて、遠野も現場に駆け付けるのでした。

誰もが、どこかで誰かの死に関わっているかもしれない。それが意図した物でも意図しない物であっても、完全に否定できることはありません。被害者の遺族あるいは関係者は、憎むべき相手がもしも存在しなければ、どんな小さなものであっても、その感情のはけ口が関わった誰かに向かうと言うこと。

ややストーリーとしては薄い感じがしないでもないのですが、それなりにまとめ上げている手腕は脚本のまとめ方が上手いということだしょうか。このドラマには、もう一つ別のストリーが展開していて、それは遠野自身にまつわる話です。

遠野は、8年前に強盗事件を起こし警察官を刺殺した安西(井浦新)を恋人の前で逮捕していたのです。そして、その恋人だった奈津美(斉藤由貴)と結婚していました。遠野は仕事のせいで、なかなか家庭を顧みる時間がなく、奈津美との約束もほとんど果たせずにいました。

今回の事件の少し前に出所していた安西は奈津美に連絡をしてきます。そして、奈津美は遠野に黙って家を出てしまうのでした。出所後、すでに小さな事件を起こしていた安西と奈津美は、遠野の心配通り一緒に行動をするようになっていたのです。妻が逃亡幇助の疑いが出てきた遠野は警察官の職を辞する決意をしますが、警察学校教官の辞令が下されます。

実は、この後続けて連続ドラマ「陽はまた昇る」が始まり、このスペシャルが序章となっているのです。遠野の刑事として人間性、そして抱えている悩みなどが理解できることで連続ドラマに入りやすくなっています。